崖っぷちを走る人、崖っぷちを作る時代。

1960年、ビートルズは来日し、学生運動は隆盛を極め、人々の時流へと抗う熱がそのまま行動へと点火し、転化されていた頃のお話です。
この物語の登場人物もその例に漏れず、片腕を失ったハスラーやワケアリの女子大生、ギャングにヤクザに果てはエスパーまで、あらゆる人間があらゆる崖っぷちのなかを走り抜けています。
彼らが織り成す疾走感は読者に迫りかけて、「お前はどうなんだ、今お前は命を懸けて走っているのか」と訴えかけてくるようです。
所々入るブラックジョークも小気味良く、作者さんの筆力を窺わせます。
エネルギッシュで、奇想天外で、ユーモラスで、それでいてどこか懐かしく。極上のエンタメを読みたい方には、この一本をお奨めします。