第14話

草の匂いのする斜面を上がり、兄貴の墓の前に立つ。



「お帰り、兄ちゃん。


滝人も明日には帰ってくるよ。」



ろうそくと線香、花を立て、手を合わせる。



ありがとな、と言うみたいに、墓を照らす光がまたたく。



俺は頷いて兄貴に言う。



「遺髪な、明後日、警察に取りにいってくるよ。


戻ってきたら、またそばにいて、俺のこと守ってくれよ」



日差しの中、墓石を響かせて声が聞こえた気がした。



(当たり前やろ、何があっても、俺がお前を一人にするわけないやろ)



それは、きっと兄貴が、俺とさとみさんに向けて、


言ったものに違いない。

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アガトウ 真生麻稀哉(シンノウマキヤ) @shinnknow5

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