Episode 11

\パンパカパーン/




爆音とともにファンファーレがグラウンドに鳴り響いた。


『みなさん!第26回サンライズアカデミー付属高等学校の体育会にようこそ!本日の天気は快晴、疑いようのないスポーツ日和です!実況は私、1年2組体育委員の新河蓮がお送りします!』


「あのバカ、何やってんだ…」


「というか蓮君って体育委員だったんだ…」


「意外だったな…」


柊香と楓から散々な言われようだが、蓮が実況する様子は結構様になっている、と思う。声量の割に表情が普段のポワポワのままというのがちぐはぐしていてちょっと気持ち悪いが。


『校長先生のお話はどうでもいいので早速競技の方にいきましょう!午前は200m走、スウェーデンリレー、長距離走の3種目です!それでは200m走に出場するみなさん、入場口に並んでください!』


蓮の掛け声で慌てる校長を無視してゾロゾロと生徒たちが歩きだす。


「じゃ、ボク行ってくるね」


「おう、頑張ってこい」


列に並びにいく柊香を見送りつつ、楓はお弁当を広げるのにちょうどいいスペースを探す。例によって4人分作ってきたので、それなりに広いスペースが欲しいところだが、少し出遅れたらしく、広いところは他のご家庭に占拠されてしまっている。楓は仕方なく、陸上トラックに近いところにレジャーシートを敷いた。


「砂が舞ってきそうでやだな…」


風でレジャーシートが飛んでいかないように四隅に荷物を置いたところで、ちょうど1年生の第1陣4人がスタートした。柊香はこの後の第2陣。事前情報によると、柊香は1番内側のトラック。隣に陸上部所属がいるが、本来なら長距離走がメインの部員だそうなので、スタートさえ出遅れなければ運動が苦手な柊香でも勝算はある。


「では次、位置について」


教師の合図で柊香たちがスタート位置に並ぶ。柊香の顔は遠目で見ても分かるくらい闘志の炎で燃えている。普段の勉強でもあれくらい本気出せばいいのに、という考えが楓の頭を過ぎる。


「よーい、」




\パンッ/




コテッ………


「あっ…」


地面を蹴るところまでは良かった。だが次の瞬間、柊香は何かに躓いて砂の上にダイブしてしまった。


「うっ、うぅ…」


目には涙が滲み、今にも号泣しだしそうだ。いや、高校生にもなって号泣するなよ…。


「走れバカ!」


無意識のうちに楓は叫んでいた。


「2位以上になったら良いことしてやるから!」


「なんですとぉ!?」


さっきまでの涙はなんだったのかと思うほどに、柊香は全速力で走り始めた。速い速い、150mほどで前の選手を抜いて3位に入ってゴールした。


「マジかよ…」


楓は信じられないという顔でそのまま固まってしまった。






ー15分後ー






「いやぁ、2位にはなれなかったなぁ…」


「まあ仕方ないな、転んじまったんだから」


「まあそうなんだけどね…良いことして欲しかったなぁ…」


「ま、まあそれは…」


楓がそう言ったとき、アナウンスが鳴った。


『先程の1年第2組ですが、2位の選手の不正が発覚したため失格とし、3位の選手を2位に繰り上げることとします』


柊香と楓は顔を見合わせた。アナウンス通りなら柊香は2位に繰り上げになる。ということは………

「後で期待しとくからね」


「えっ、ちょま…」


笑顔でそう言い残し、柊香は自分の席に戻って行った。

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タマシイ彼氏(続) (打ち切り) ちやま式 @chiyamax

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