第8話 狐人ちゃんとクラスメート 上

 昼休みのひと時。

 教室で適当に弁当をついばんで、一息を俺はついた。

 と、そこで黄色い声が聞こえた。


「がおー、私は強いのですよ」


 はい、かわいい。

 狐耳のちっちゃい女の子が(「>ω<)「 なんてポーズをしているだけできゅんとする。

 俺もキュン死させられそうになる。

 クラスメートたちの心臓を射止める。倒れさせる。

 しかし、それは彼女が期待するものとは違うものを射止めているわけで、幸せにさせるものでしかない。

 ほのぼのする狐人ちゃんの態度。彼女は必死に自分の強さを見せる為に(「>ω<)というポーズをするわけだが、ほんわかとさせてしまうわけだ。

 普通の高校生の女の子がすればあざといだとかいわれそうだけれども、狐人ちゃんの必至な姿は誰もが守護まもりたいと思わせてしまう態度。


 そういうわけで親衛隊みたいな子が出現する。


「いや、かわいいねえ。ホントヨシヨシヨシヨシヨシヨシ」

「私は怖いんですよ。ねえ、ねぇねえねぇ。やめて、私は怖いんですよ。何でエルフちゃんは私を撫でるんですか? どうして?」

 涙目になっている狐人ちゃんの頭と耳をなでなでしながら抱え込むエルフちゃん。

 その隣ではクラスメートAさんこと、眼力の鋭い陸上部副部長さんが睨みを利かせる。

 うん、陸上部副部長こと、目力さんの方が狐人ちゃんよりも圧倒的、非常に怖い。

 強調したいので同じ意味を重ねたくなるくらいに。後ろに虎とか竜が見えそうなくらいに怖い。

 いつもなら、わりと姉御肌であるが愛嬌のある顔なのだが狐人ちゃんのことになると非常に怖くなる。特に目が怖いので、目力さんモードと言われている。

 その他にも女の子が何人かいる。みんな狐人ちゃんを汚い男子生徒から守るべくスクラムを囲んでいるのだ。

 でも、その中でも狐人ちゃんと同じ異世界の住人であるエルフちゃんは別格で彼女に抱き着くことなどは許されている。

 その次に目力さんはリーダーらしく、狐人ちゃんにに近づく親衛隊隊長のようになっている。


「目力さん、やっぱすごいわ」


「んんっ? 何か言ったか? もやし」


 俺また独り言言ったか。

 つーか、俺はもやしじゃない。

 ふと、エルフちゃんの顔を見るとヤレヤレとばかりに肩をすくめながら、頬を膨らませて笑いを抑えている。

 あとで覚えていろよ。


「何も言っていませんよ。ええ、僕は何もね」


「ハイハイ。狐人ちゃんに言わないなら、別にいいからアッチに行きなさいシッシッ」

 何とも言えない扱いにちょっと泣きたくなったが、目力さんの怖さにもやしの俺は去るしかない。


「あ、あのう、私って、怖くないんですか。これ守られていませんか」

「大丈夫大丈夫。アナタは怖いわよ」

 と言いつつ、エルフちゃんの顔は妹の面倒を見る姉のようだ。

「その顔、いつも通りのかわいい子を見る顔ですよね」

「えっと、その」

 

「目力さん」

「狐人ちゃんまで私のことを目力と」

 ちょっと気にしているらしい。

 目力さんの目がうるっとしている。

「ええっと、私は守られなくてもよいのです。かっこいい狐人を目指しているのです。だから守られる子ではないのです」

 そう言って、狐人ちゃんはエルフちゃんの拘束を解いて、教室を出た。


「ちょっとお花を摘みに行ってきます」

 古風な言葉を使って狐人ちゃんはどこかに行ってしまった。


「あーあ。残念。拗ねちゃった。ま、すぐに帰ってくるでしょ」


 付き合いは長いらしいのでエルフちゃんの言うことは正しいのだろう。

 だが、目力さんはエルフちゃんのことをちょっと睨みつけた。


「何かな。大体予想はつくけど……過保護にするのにも限度があるわ。少し頭を冷やしたら帰ってくるから。心配しないで待っておきましょう」

「けれども彼女はここに来たばかりで」


「大丈夫。見た目より大人。胸と同じくらいにね」

 

 一言余計だと思う。


 そうして、昼休みが過ぎて、昼の授業が帰ってきてから狐人ちゃんは教室に帰ってきた。

 ちょっと口がへの字。

 機嫌が悪いのだろうか。

 それともちょっと考えたことがあるのだろうか。

 色々なことを考えていたら放課後になった。


 電源を切っていた俺のスマートフォンを立ち上げるとピロリンとシステム音が鳴った。

 LAINに1通のメッセージがあった。


『放課後、ちょっとだけ付き合ってください』


 狐人ちゃんからのメッセージ。

 マジですか?




 

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俺の日常はファンタジー?(改題:ファンタジー世界の人間が現代日本に来た日常) 阿房饅頭 @ahomax

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