異世界帰りの主人公・飛田雅弥は過酷な呪いを背負いながらも、異世界を救って帰ってきた――そこだけ見れば救世の英雄であるはずなのですが、どうにも扱いがぞんざいというか、ぐだぐだ。
ヒロインからの扱いがいまいちぞんざいなの、ASMRとゲームが趣味なせいでしょうか。どうなんでしょうか。
スタイル抜群のネコミミ少女に始まってよわよわハーピィ少女やら回転寿司の美人もといオーガ美女さんやら宮仕え? なエルフさんやら現れて、作風によっては主人公の取り合いが勃発するハーレムラブコメになりそうな仕立てですが、どうもそういう塩梅ではない模様。
信頼(※プラスマイナスの向きは問わないものとする)や、時に漂うエロスの香り、いざという時に一本通った確かな芯が目を引く一方、ハーレムラブコメというにはなんだかキラキラ感が…こう…何でしょうね、やっぱりぐだぐだでコミカル寄り。
あ。個人的にはクソザソメンタルハーピィ・アリエスさんの泣きっぷりが、今はガンには効かないけどいずれ効くようになりそうな健康にいい感じで好きです。いい塩梅にぞんざいな扱いなのいいなー、と思います。もっと泣いて(※最低の要望)
裏を突き詰めてゆけばものすごくシビアで触れ難い気配がほの見えるのに、ぐだぐだっとした異世界行脚や同居生活にそれらを包んで物語は進み、「さすが(※主人公)様!」みたいなの特段ない気がしてるんですが、でも主人公が「凄まじい」ことはひたひたと染み出す水のように物語を通底して伝わってくる。
時にそうしてほのめかされるものにはたと気づいてしまったりする。
「かっこいい」というのとはなんだか違うんですが、どうにかして、何かの形できちんと報われてほしいな――と思ってしまう主人公と、愛があるんだかないんだかわからない、けれど気の置けない距離感でぐだぐだしてるネコミミ少女マオウやそれ以外のヒロインたち。
その、どことなくくすんだ、決して「キラキラじゃない」もどかしい距離感こそが、一言では言い表しがたい本作の魅力ではないかと思っています。
噛んでても味がなくならない骨付きラム肉みたいな、なんとも不思議な味わいのおはなしです。