後日談
淡い夕暮れの空の中を、アタシは泳いでいた。そう、文字通り、泳いでいた。
「ちょっとしたダイエットにはこれが一番よね。気圧ラブだわ~」
少しずつ冷え込んでいくが、こうして夕焼けに包まれていると、身体の脂肪ごと燃えるような気がするのだ。
西に
「あぁっ! アイツ!」
よく見ると着ていた制服が違うので、アタシは思わず
「はぁぁ? アタシがガラにもなく説教してあげたのに、まーだ学校サボってるわけ?」
手がわなわなと震え始め、こめかみがヒクヒクと引きつるのが分かる。
「アタシのことなんか、すっかり忘れちゃってるみたいね」
ノラジョンの表情は心なしか晴れやかに見え、紙パックに差したストローを
「っていうか! 全部夢だと思われてたのが腹立つわ!マジ許さない抱いて!」
怒り任せにノラジョン目がけて一直線に飛んでいくが、不意に視界に飛び込んできた姿に、後ろにのけ
「あの女、小池……!」
小池は歩道からノラジョンに向けて、顔を隠すようにひらひらと手を振っている(アタシからは丸見えだけど)。アタシよりは
ノラジョンはすぐさま立ち上がると、途中転びそうになりながらも芝生を駆け
「ポケットに手なんか突っ込んじゃって。カッコつけてんじゃないわよ、まったく」
お互い何かを言いかけては
「なるほど把握、他校同士のカップルってわけね」
先ほどから<別れろ光線>を二人に向けて放っていたが、ふと小池の後ろ姿をじっと
「むぎぎ……アイツ、球投げ返してこないと思ったら、スレンダーが好みってわけね」
夕暮れ時の秘密基地での出来事が、はっきりと記憶に浮かび上がる。
全アタシリサーチだと、あの時の体型が一番男に好かれやすいはずなのに。それなのに、だ。
「今! アンタは間違いなく! 全国の女子を敵に回したわよ!!」
片足を
「決まっ……あいたたた、腰が……」
直後、腰に
リバウンドは本当に不覚だった。ついこの間、一目見て気に入った大学生の男の子。ちょっと好みの顔だったからって、すぐに食いついたのが間違いだった。顔に似合わずハイカロリー男子、ノラジュンに続き二人目である。
「あんのヤロウ、今夜こらしめに行ってやるんだから」
左手で作った拳を右手の
「はっ、いけない。ダイエットダイエット」
風も虫も、今はもう
夜が来る。
ポンピング・メイデン 規村規子 @kimuranoriko
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