Postlude.
epilogue. 素直な音で
31日の夜に、LI○Eが届いた。それは、あたしが最後に手にいれた青春の一欠片――春樹くんからのものだった。
『明日からいよいよ、社会人ですね。僕と同い年なのに、もう一人前の人間として社会に出るのかと思うと、正直、落ち着かない気分になります』
そのように始まった彼からのメッセージは、あたしへの感謝とエールを綴ったものだった。
いやいや、やめてよね。あたしたち、一応恋人なんだからさ。今週末にはデートするわけ。こんなメッセージもらっちゃあ、恥ずかしくて顔合わせられないじゃん。
あたしは春樹くんにメッセージを返しながら、彼との今後について考えた。
たぶん、順風満帆というわけにはいかないだろう。あたしは社会人、春樹くんは学生。立場が違えば価値観も違ってくるだろうし、例えばあたしが仕事の愚痴を言い続けて、春樹くんがそれに嫌気がさして、言い争いになる……なんてことも有ったっておかしくない。ありとあらゆるリスクが考えられる。嫌だなあ、今までと同じがいいのに。
それにしても、あたしと春樹くんの出会いは嘘だらけだった。――
居場所なんて要らない、手助けなんていらない、と嘘をついた彼。人間関係なんて、利害関係で十分だ、と嘘をついたあたし。
「1男」のくせして、「4女」と同い年だった彼。「1女」の真似事をしてキャンパスを歩いていた「4女」のあたし。
これらの嘘がひとつでも欠けていたら、たぶんあたしたちは出会っていなかった。同時に、こんなしょうもない嘘に、最後の最後まで振り回され続けた。
でも、そういうつまらない嘘を全部とっぱらってしまった今、ようやく互いに向き合えるようになったんじゃないか、と思う。
そういうわけで、あたしたちの関係は、始まったばかりだ。
良いか、よく聴け、楽しみはこれからだってさ。
『あの日の嘘つきプレリュード』――fin.
あの日の嘘つきプレリュード まんごーぷりん(旧:まご) @kyokaku
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