我は盗賊、汝(うぬ)が誇りを掠めとらん


 建物のかいほど石の壁は厚くなり、光をさえぎって冷たく陰気な暗がりを生みだす。

 だが、石の壁がどれだけ厚かろうと、隙間風を防ぐことはできねえ。

 それは何処からともなく入り込んで、すべてのやつを体の芯から氷らせてくのさ。

 その隙間風みたく死は砦に入り込んだ。


 ふと、見張りのオークが身震いする。

 首のなくなった体がぐらりと傾き、静かに蠢く靄のような影に呑まれた。

 錠やかんぬきも役に立たず、扉や壁の隙間を擦り抜けて、ありとあらゆる命をしらみつぶしに奪いながら、音もなく匂いもなく死は浸透していく。



 女は裸の恰好で土牢に囚われている。

 鎧も剣も剥がれて枷と鎖に繋がれ、糞小便を垂れ流すしかねえ。

 でっけえ豚鬼オークの前へ糞に塗れた尻を突き出しているとこだ。

 鬼王キングの股間の逸物ものが穴を貫いて抽挿でいりする。

 女はみっともねえアヘ顔でよがり声を上げ、卑猥な言葉を喉を嗄らすほど喚いている。

 王の赤い眼は吸血鬼と同じように魅了の魔眼だろう。

 女は孕んでいる。垢まみれの腹が罅割ひびわれるほど膨れ上がっていた。

 胸も膨らんでかさも乳首もでかくなり水のような乳を吹き出している。

 脇毛も下毛も茫々ぼうぼうで吐き気がするような汚臭を放っている。

 汚れた白金の髪は灰色とも茶色ともつかず、薄くまばらになってところどころ禿げ、おびただしい抜け毛が土床に落ちていた。

 その上に豚頭の首が落ちて転がった。

 女の中で果てた逸物ものがずるりと抜け、酷くゆっくりとゆっくりと巨体が倒れる。

 女の表情が空ろになった。

 声をかけても反応がない。

 短刀の刃で頬をぴたぴた叩いてやる。

 徐々にひとみへと理性の光が宿ってくる。

 女が俺をみた。


「……くっ、殺せ」

 女は顔をそむける。

「おいおい、それをいう相手はこれだろ」

 俺は豚の頭を蹴った。

 女は口惜しそうに下唇を噛む。

 そそられる表情だぜ。

「それがおのぞみなら、そうしてやらんでもねえがよ。おめえの本当の望みはなんなんだ、女騎士さん」

 その耳へ底意地悪く囁いた。

 飢えかつえたような渇望と懇願の眼差しが向けられる。





「……だ、抱いてください。私を抱いてくださいませ、ご主人様」


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盗賊さんは女騎士(くっころ)さんにくっころいわせる 壺中天 @kotyuuten

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