第3章 2023年 二度目の譲渡以降

API有料化告知、翌日の凍結祭りへ

 カクヨムの更新自体が非常に久しぶりです。

 こちらの更新をやめて以来も、さまざまな方からTwitterからMastodonへの集団的「移住」が幾度となく唱えられました。

 たとえばSpaceXやテスラで知られるイーロン・マスク氏がTwitterを買収した際に一部ユーザーに湧き上がった不安感から、ハフポストさんなどのニュースメディアが紹介した時などは、ここ最近で起こった大きな動きだったのではないでしょうか。

 

 しかしこれまでも大規模な「移住」などは起こらず、結局は日本のソーシャルメディアにおけるTwitter一強状態はまったく揺るぎませんでした。

 若者向けに『TikTok』が流行ったり、ゲーム用の『Discord』、またオタク向けの新メディアとして『くるっぷ』というソーシャルメディアも出てきたりはしてますが、なかば社会インフラと化したTwitterの地位を脅かすところまでには至っていないというのが実情と思われます。そもそもTwitterの地位を奪うことを目的としてないでしょうし。


 その理由として考えられることはやはり、なんといってもTwitterは抱えるユーザー数が圧倒的に多いことに尽きます。それゆえ多くの人と交流を持ったり、クリエイターなどから見ればより多くの人に情報を届けたりすることができます。その優位性は容易には動かしがたい。

 Twitterでは万バズ(10,000以上のいいねRT)しているような絵描きさんでも、Mastodonでもイラストに高い関心を持っているユーザーが多いと思われるPawooですらブースト(TwitterでいうRT)が一桁……などというのも珍しくありません。

 私の所属しているPawooのアカウント数は、81万7千人(2023年2月3日朝現在)。以前の記事を書いた時は確か50万人くらいだったと記憶してますので、人数は増えている……のですが、Mastodon全体として見たとしてもTwitterの代替を担うにはあまりに少ない。

 

 個人ユーザーの立場で見ても、ネットでつながっている仲のいい人たちが同時に移行しない限りは、その人たちの近況を追ったり交流したりはできません。自分独りが移ったところで、多くの方のリアクションが期待できるTwitterと比べますと、やはり物寂しいと言わざるをえないでしょう。

 

 また、当初Mastodon≒PawooがもてはやされたのはTwitterの「凍結」(アカウント停止処分)による不安感が広がったことがきっかけでした。

 その旗振り役となった方がアダルト方面の絵描きさんだったことは、一般ユーザーにとってはいささか他人事に映り、その後の推移に与えた影響は大きかったのではないかと、今となっては思います。

 Pawooの移行を唱える人たちは所詮アダルトな絵が見たいだけのヤツだろう、というイメージは、おそらくつい最近まで付きまとっていたのではないでしょうか。



 Mastodonが取り上げられてはすぐに沈静化し、結局のところみんなTwitterを利用し続ける、というパターンがあまりにも繰り返されてきたせいか、Twitter上で見られる「移住」騒ぎに対する反応も冷ややかになっていました。どうせ今回も一過性の騒ぎでしょ、とばかりに。



 今回も、また例によって大規模なユーザー「凍結」が発生し、にわかにMastodonが注目されています。

 しかし、今回は今までの騒ぎとは少し違った様相を見せているように思われます。



 今回の「凍結祭り」の前日には、その直接原因と思われる発表がTwitterからありました。それはTwitterから外部サービスへの認証(ログイン)や連携に使うAPIというサービスを有料化する、というものでした。

 こちらはあくまでも一般ユーザーに直接影響を与えるものではなく、botなどの自動ツイート対策として考えられたものと思われます。

 ですが、Twitterを通しサービスを連携している開発元──とくに企業でなく個人──にとっても影響のあるおそれがあるため、間接的にユーザーに影響を与える可能性が取り沙汰され、大騒ぎになったのです。


 たとえばゲームなどのログインに「Twitterからログイン」という選択肢が設けられていることが多いですよね。今回それができなくなる可能性があるのでは……? という憶測が広がりました。仮にそうなった場合、Twitterだけにとどまらない大問題です。

 『アズールレーン』『ブルーアーカイブ』などのゲーム運営を手がけるYostarがTwitterに確認を取ったところそういった影響はない、という回答を得たそうなのですが、具体的な改定がどうなるのかTwitter社から具体的な発表がない(2月3日午前現在)ため、念のためアカウント連携を見直す措置が推奨されているなど、根本的な解決には至っていません。

 

 そういった変更発表による混乱があった矢先での急な凍結祭りです。

 私がタイムラインで見る限り、サービスがこれまでどおり維持されるだろうか、という不安感は、当初Mastodonが持ち上げられた時と同等かそれ以上にまで高まっているように感じられます。

 なにより今回は凍結の対象が以前の「凍結祭り」より大規模であるらしく、不安に拍車をかけているように映ります。

 私の所有するツイッターアカウントでも10~20ほどのフォロワーさんがいなくなりました。多くのフォロワーを抱える人なんかですと1,000人ほどのアカウントが消失した、というお話も目にしました。

 Twitter凍結が、もはやスパムやアダルトだけにとどまらず、一般のアカウント全般に関する「危機」となってたち現れたのです。

 

 凍結の原因として現在浮上しているのが、公式アカウントそのものも凍結した外部連携サービス『マシュマロ』などを繰り返し使っていたことによって「同様の内容の定期投稿」が疑われて凍結の対象となってしまったこと。その他、

 

 二段階認証をしていない

 限りなく100%に近い相互フォロー

 URLリンクの張りすぎ

 自分の所有する別アカウントからのセルフリツイート

 ハッシュタグの乱用

 フォロー外の人へDMを送る

 


などが現在凍結の可能性の高い行為として指摘がなされています。

 なんにせよ、影響が広範に及ぶ騒ぎになっていることで、Mastodonが「避難先」として、久々の勢いをもって注目されているのです。



 しかし、やや不安に思うところもあります。

 Pawooから運営権を譲渡されたラッセルですが、昨年末彼らもまた別の運営を譲渡しているのです。

 引受先は、MastodonとしてPawooに次いで3位のユーザー数※を誇るmstdn,jp、4位mastodon.cloudの運営も行っているというSujitechスジテクのスージー・ヤン氏の所有する別会社(The Social Coop Limited)のようです。

 つまりスージー氏は2位~4位のユーザー数を誇る内部ソーシャル・ネットワークを運営しており、実質Mastodon内トップの巨大ネットワーク管理者といえます。

※ちなみに1位はMastodon創業者オイゲン氏のmastodon.social


 些細な点を気にするならば、運営が移っていながらPawooのバナーはラッセル表記のままですし、大丈夫なのか……? という一抹の不安は残ります。

 もっとも、mstdn.jpを数年運営しておられるので、そこまで気にする必要はないのかもしれませんが……

 

 また、現在ではそれらとは別にFedibirdという有力インスタンスや、Mastodonと連携できるMisskeyといった新たなソーシャルサイトが現れ、以前よりもMastodonにおける選択肢が増えています。

 私は今のところはこれまでどおり、PawooにとどまりつつTwitterの動向を注視しますが、これを機に新しい場へと踏み出すのもまたいいかもしれませんね。

 

 

 

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マストドン、ローカルから見るか?連合から見るか? コミナトケイ @Kei_Kominato

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