第2話というか異変。

朝起きて、顔を洗い、歯を磨き、朝ごはんを食べ、ゴロゴロとスマホで情報収集。ふむふむ。やはりチャットツールは人をダメにすると思う。


そんな事を考えながら午前9時。衣服を着替え、いざ出発。二十年前の、祖母の置き土産へと。


「……………なんだココ」


そもそもその空き地とは少し大きいだけで、子供たち完成をあげながらミニサッカーなどをしているような場所。色々法律などを考えてみればダメな気がするものの、暗黙の了解となっている。閑話休題。


さて、その空き地へと向かうのに家から出て十分もあれば十分であり、道に迷う、見失う、着いたとしてもどこから分からない。なんてことは絶対にない。はずだった。


鼻歌交じりでたどり着き、結局持たされたスコップでテキトーに掘って終わりだったはずだったのだ。


「こんな建物どっかで見たことあるな。そう、たしかあれは子供向けと思いきや大人でも十分に楽しめるあの映画……………」


そこにあったのはこじんまりとした洋風の建物。円錐形の屋根、何回も折れ曲がった煙突。ただの砂地だったはずの地面は花壇になっていたり木が植えられていたり。そしてそれを囲う塀と門。


「昨日見た時にはなかったんだ。つまりこいつは墨俣城」


思わず思い出すのははるか昔、豊臣秀吉がやってのけた一夜城。にしてもこの場合は少し違うとすぐに分かる。


崩れかかっている屋根の端、剥げかけている塗装、地面から生えているつたは壁面に絡みつき、綺麗な花も咲かせていた。


「(一夜にして建ったにしてはやけに年代を感じさせる……………)」


職人の技なのかもしれないが、そんな無意味なことをするはずがないし、ツタに関してはどうやったのかという疑問が立ちふさがる。そう、まるで魔法で土地ごと引っ越してきましたなんていう可能性が頭の中に浮かぶ。


「いやいやないない」


自嘲しながら件の家を観察していく。窓から中を覗ければ、と思ったがあいにく窓がない。中の環境が俄然気になってきた。


思い切って呼び鈴を鳴らしてみた。


ぐぎゃぎゃぎゃ!ぎゃぎゃぎゃばー!


文字にすると一昔前の下手くそな怪獣の中身みたいな声が中から連動して聞こえてきた。しかしなんというのだろうか、女でも、男でもない、そもそも人が出した声なのか分からないほどに濁った音。


とたんに怪しくなってきた展開にもうお使いとかどうでもいいから帰ろうかな、なんて考えが浮かんだが、次の瞬間にその方針はなしとなった。


閂がふわりと人の力を借りずに開いて、扉もガチャリと空いた。そもそも中で人が動いた気配はなく、からくり仕掛けの音はしなかった。やはり聞き耳技能位はとっておくべきだったか?


ともあれ、完全に招かれていることは分かる。ならばやることは一つ。


「おじゃましまーす」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

魔法使いの弟子は大変なものだ。 ちはや @chihayahuru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る