第2話助けられた
新しい母と姉ができたのは私、東條遥が小学校6年生の時だった。
「はじめまして梓ちゃん、東條聡です。隣が娘の遥、梓ちゃんの3つ年下で小6なんだ…遥、ご挨拶は?」
「は、はじめまして!東條遥です、よろしくお願いします」
「あらあら、可愛らしいわね」
この時はまだ純粋に新しい家族が出来て嬉しかった。美人な母と無表情だけど美人な姉、家族に憧れていた私にとって最高のプレゼントだった。
でもそんな母はお父さんがいない時に私をいじめるようになった。姉はそんな私と母を見ているだけで助けてはくれなかった。母は、私の何が嫌なのだろうか…分からない。
進学し中学校に入学した。父がいない家では前よりもひどくなっていた、ついに夕食まで作ってもらえず自分の分は自分で作ることになっていた…高校に進学した姉はバイトをするようになり最近では全く会っていなかった。
疲れて夕食も作る気が無かったある日、音で姉が帰ってきたことが分かった。何も食べていなくてお腹が空いた私は母が寝ている夜に軽く食べようとリビングへ入った時に姉がご飯を作って並べているところを目にした。夕食の時間に食べなかったのかな…不思議に思った。
「ぁ…」
「貴方の夕食よ」
「あ、ありがとう…ございます」
驚いた…ずっと私に無関心だった姉が夕食を作ってくれるなんて。
いただきます」
そう言って食べ始めると今まで私が作ったものよりも美味しかった。
「とても…おいしいです」
そう言って食べ始めた私に、向かいに座ったいた姉の表情が無表情だけど…何かを決めたような気がした。
その後は自分でも驚くことしか出来ないことが続いた。
姉にここから遠い高校を受験するように言われたのと、姉の伯母と祖父母に協力を得てマンションを決めたからそこに2人で住むことを言われた。言葉が出なかった、今までずっと姉には嫌われていたのと同然だと思っていたから。
「ちょっと、どういうこと?」
「ここからだと私の大学へは遠いから引っ越すことにしたの、マンションはもう見つけてあるし大体の荷物はもう運び済み。あと、この子も合格した高校がそのマンションのほうが近いから一緒に住むことになった。生活費は伯母さん達が負担してくれるし今までバイトで貯めたお金があるから大丈夫。最後の荷物もトラックに積んであとは私達が行くだけだからもう行くわ、連絡はたまにする」
そう言って姉は私を連れて新居へと向かった。
新居となるマンションは結構広かった、このマンションは姉の伯母と祖父母が厳選した家らしい。姉の祖父母はかなりのお金持ちらしく、伯母も優秀…なのに何故母がアレなのだろうと姉がつぶやいていた。
中に入り散策をする。キッチン、お風呂、物置、部屋…マンションなのにとても広い。
「…遥」
「は、はい」
もう何回も話しているのに…緊張してしまう。
「あ、梓さん?」
「今まで、母がどんな仕打ちをしてきたかは分かってるわ。私は知って無視していたのだから…これだけは言うわ。この引越は私のためでもあって貴方のためでもあるの」
「私の、ため?」
「あの母には産み育ててくれたことは感謝するけど、それ以外に感謝することなんてない。父も特に興味はないわ、でも…貴方に会わせてくれたことは感謝する」
私は自然に涙を流していた。
「かなりの時間を掛けてしまったけど…ようやくあんな最悪でしかない家から出てくることが出来た」
そう言って姉は私を抱きしめてくれた…とても暖かく、とても優しかった。いつも見ているだけだったけど…姉は私を助けてくれたのだ。
「ようやく、貴方を、遥を…救うことが出来た」
「っ…あ、ずさ…さんっ」
つらそうな姉の声…姉がこんなにも私の事を思ってくれていたなんて、初めて知ったのだ。
私はこの恩を決して忘れない、忘れてはいけないのだ。
傍観するのをやめた私 森崎優嘉 @yuuka08
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