姉と弟

咲間 さな

お鍋。

【登場人物】


まや♀(20)…姉、一人暮らしをしていて生粋のブラコン。だらしない性格をしているが、外ではしっかり者で尊敬される。料理オンチ。


あき♂(18)…弟、家族と住んでいる。一人暮らしの姉のところへ遊びにいく。姉のブラコンには飽き飽きしている。几帳面な性格だが、姉に対してはあたりが強い。





あき「ねーちゃーーーん!!」


まや「あきー!!!いらっしゃぁーい!!!」


あき「ひっ!」


まや「なぜ避けるの!!!」


あき「避けるだろ普通」


まや「もう!照れ屋さんなんだからっ!」


あき「どう見ても照れてねーよ。明らかに引いた目だよ」


まや「あきだけに?」


あき「やかましいよ?」


まや「そんなことより!お鍋の材料買ってきてくれた?」


あき「ア〜ゴメン忘レテキタ~」


まや「わざとでしょ。」


あき「もちろん。嫌がらせにきまっ」


まや「そんなにお姉ちゃんと一緒に買い物行きたかったの~??もう、そうならそうと最初から」


あき「言ってない。」


まや「…よっし、お買い物行こー!お鍋買うぞー!」


あき「お、おうー!」


家を出る


まや「どんなお鍋にしようかなあ~」


あき「そうだなぁ、俺はキムチ鍋好きだけど」


まや「やっぱり土鍋かなぁ~でもアルミ性もいいよね」


あき「そうだなぁ~…ん、え?…アルミ?」


まや「でも雰囲気出るのはやっぱり土鍋かな」


あき「そこから?!」


まや「へ?」


あき「鍋どうしよっかなって、鍋買う所から?!」


まや「…え、うん。」


あき「計画性皆無だな!!引越ししてもう半年だぞ!…もしかして、その他にも…」


まや「え、うん。自炊するとなったらまず冷蔵庫かってぇ~」


あき「…え、それはないわぁ~弟ドン引きー。マジありえないんだけど」


まや「急にギャル?!でもそんなとこも可愛い!」


あき「ちょっともうお黙りくださいまし。あー!もう!スーパーなんかちゃんとした鍋売ってないっつの!俺は別のところで鍋を買ってくるから、ねーちゃんはスーパーで具材買ってきて!!」


まや「ほんと!!さすがあき!頼りになるぅ~!」



あき「そして、無事俺も鍋を買い終わり、ねーちゃんと家で再集合した。」




まや「よっしゃー!じゃ、早速やるか!鍋パ!」


あき「あぁ、やるか。んで、結局何鍋にしたんだ?」


まや「え、これ土鍋だよね?」


あき「いや、鍋自体の話してねーし買ってきたの俺。」


まや「あー!出汁か!」


あき「普通の解釈はそっち。」


まや「出汁は、あきのリクエストにお答えしてキムチ鍋にしたよん!」


あき「おお!ありがとな!」


まや「よし!じゃあ、具材も準備しちゃうねぇ!」


あき「おう!…ん、なんだ。なんか浮いてる。」


まや「ふふふ~ん♪」


あき「なぁ、おい、このー、なんだ。目玉みたいなやつがチラチラ見えるんだけど。なにこれ。なんなのこれ。」


まや「ああ!かつおだし取ろうと思って、カツオまるごと入れてみたの!」


あき「これ絶対生魚だろ!!!こえーよ!気味悪いよ!浜に打ち上げられた瀕死の魚みたいだよ!普通はかつお節を入れるの!!!魚そのまんま入れないのー!!!!」


まや「えー!そなんだぁー!」


あき「しかも、ていうかそもそも、キムチ鍋の素入れてるのに出汁いらねーよ!!」


まや「ありゃー、お姉ちゃんやっちゃった?」


あき「紛れもなくやらかしまくってるよね。尊敬っすわ。」


まや「あざっす。」


あき「ほめてないっす。」


まや「うっす。」


あき「もう、いいよ、鍋の味は諦めた。ていうか、元が崩れたら全部ダメになるけども」


まや「具材切ったよー!」


あき「おう、ありがと、う?!?!?!」


まや「見た目綺麗になるように全部輪切りにしてみたのー!綺麗でしょ?」


あき「わぁー!とってもきれーい。じゃっねーよ!!!まあ、大根は、大根はいいよ。でもお前…くずきりの輪切りって、これみじん切り!!!確かに切れば断面輪切りになるよ。でも違う!!!麺状になってないくずきりなんて、もはやくずきりじゃなぁい!!!」


まや「まあまあ、細かいこと気にしないで」


あき「気にしなくても、細かくなってしまってるよこの具材たち!」


まや「ほら、具材たちにもいろいろな過去があったんだよ」


あき「貴様に切り刻まれる過去をな。俺がくずきりだったらビックリしちゃうわ。だってまさか自分がみじん切りにされるとは思ってないもん。ショックだもん。自分の存在意義を問われるようでやだもん。」


まや「あきはくずきりが大好きなんだね!」


あき「違う!不憫なの!!」


まや「ほら!そんなこと言ってたら、くずきりもういけるんじゃない??よーくあったまってるよー」


あき「うん、鍋に溶け込みすぎてどれがくずきりかすらわからない。」


まや「えー、これだよー?」


あき「なんでわかるだよ。怖いわ。うわっ、ほらもう細すぎて米粒みたいじゃん。」


まや「まあ、そういう時もあるよね。社会の厳しさを感じるよね」


あき「深いように聞こえてペラッペラだぞ。」


まや「でも、社会は厳しいのよ~?家ではお姉ちゃんこんな感じだけど、外ではバリバリキャリアウーマンなんだから!」


あき「え、なに。家のだらしなさ自覚済みなの。」


まや「まや先輩まや先輩って後輩からも慕われちゃってもう人気者なんだから!弟として鼻が高いでしょ??」


あき「じゃあ、彼氏とかは?」


まや「……。ぷっ、あははははっ!!あきったら何言ってるのぉー!私にはあきがいるのに、彼氏作るわけないじゃんそれ浮気っていうのよー!ww」


あき「あんたが何言ってんだ。」


まや「もしかして?お姉ちゃんが誰かに取られないか心配とか??」


あき「ないです。」


まや「即答ー!!」


あき「まあ、でも、ねーちゃんはほんとに彼氏作らない方がいいと思うぞ。」


まや「え。もしかして、やきもちいぃぃぃ!!!!きゃぁぁぁ!!!!//////」


あき「ちがうよねぇ。ねーちゃんの彼氏になる人が不憫だからに決まってるだろ。」


まや「ちょっとちょっと!あきはお姉ちゃんの恋愛観を馬鹿にしすぎじゃない?!」


あき「ねーちゃんに恋愛観なんかあったのか。」


まや「失礼な!お付き合いする人には誠実にそしてちゃんと尊重して、相手の癒しになる存在になるって決めてるんだから!」


あき「おお、ねーちゃんとは思えないマジレス。そうだな。恋愛観を相手に求めるんではなく自分がどうなるかっていう発言にはちょっと感動してしまった。」


まや「でしょ!!だからー、こんなダメなお姉ちゃんを見せるのは弟のあきだけなのだよ?」


あき「普通にちゃんとしたとこみせてほしいんですけ

ど。」


まや「あきといると、気が抜けて楽ーでいられるんだよね!」


あき「お、おう。改めて言われると恥ずかしいな」


まや「照れてるー!可愛いぞーあきー!!!」


あき「やめろ!!ひっつくな!!!」


まや「あははははっ!!」


あき「…ったく。」


まや「えへへ~!」


あき「…ほら!鍋続きするぞ!!」


まや「はーい!具材投入!」


あき「ちょっとまて。」


まや「え?」


あき「これなんだ。」


まや「あんこもち」


あき「宇宙人が。」




fin






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