第17話エンディング~そして後日談~

「私が、悪いのですね……」


「……あなたに、そう言ってもらいたかった……」


「ごめんなさい」


 もう、なにも言わずともわかった。わかりあえた。亜神は女神を癒すためにそばにいたいと望んだこと、自分以外の誰にもできないと確信して……それを、告げた。





 男神は迷いの神殿で、さまよい、いつしか川に沈んだ。それきり意識を手放したので亜神ももとのやさしげな少年に戻った。


 女神は初めての戦いに勝った。少年たちは口をそろえて言う。


「女神は正しい」


「その苦しみごと、我々はあなたを信じる」


「そうです、女神。だからあなたは」


 こくり、と彼女はうなずいた。


「強く、ならねばなりませんね……」


 もうすぐ朝日が昇る。


     ◆   ◆   ◆


「えんど、と」


 バトルがまだ弱いな――。最後わかりあっちゃうし。やっぱりアクション映画とか観て頑張んないと。


 とりあえず、今日のトラベルは終わり。


「かいさーん」


『いえ~~』


「女神もお疲れ様」


 私はゆっくりと胸の中で言葉をかみしめた。


『いいのよ、いいのよ』


 いつもよりふわふわした回答だった。それで聞いてみる気になったのだ。脳内キャラとしてお告げをくれたりするのは彼女だ。


「出来はどうだと思う?」


『かんぺき』


 私は一気に気が楽になるのを感じた。女神を出演させるのは気が引けたので、暖かい言葉に心底ほっとした。大切な人を危険な目に遭わせるのは心がすさむ。本当は身を切られるようだった。相手が女神だと私はどSになりきれない。


「女神がそういうなら、賞も楽勝かな」


 私はいい気分になって椅子の背もたれにぐっと寄りかかった。


『後半一気に書き上げたねー』


 脳内キャラがくっちゃべる。


「地金が出たって感じ」


『どういう意味?』


「もとから一晩で草稿あげるタイプだから」


『そっかー』


 そのへん、あんまりツッコまない。この人たち。





 後日談。(執筆後)


『これってオリエンタルな話なの?』


「うんいや、国籍不明ってことで」


『こんな田舎、2XXX年に残ってるかなあ』


「残ってると思うよー」


『戦争とかでボロボロになってない?』


「軍事的拠点にでもなってなければ、まず標的にはならないんじゃないか?」


『それにしても、田舎の人って自我が薄くて、結婚が流行らないらしいな』


「結婚ん? してないからわかんないよ」


『人口問題、あやしくない? 村を襲うのに子供使うなんて、人材不足なんでは?』


「ああ、うんそういう話だけれど」


『なんで舞台が戦国時代になるよ』


「あー、あれは枝だよ」


『枝葉末節ってこと?』


「ちがうよ、大空を舞う鳥が、ひととき翼を休めるための枝が、土地が、安全地帯が欲しくてみんな戦ってるんだと思ってる」


『そういうふうに説明してくれ、最初から』


「説明したらわかってくれたの?」


『わからなくってもうなづいてやるよ』


「核廃絶、未来においてもとうてい無理だと思うし」


『お前の世界観、混乱状態じゃねーか』


「だからそう言ってる」


『悪化しないかなあ、それって、さ。悲観的というか』


「心配したって始まらないよ。ストーリーを始めよう」


『人生という名の、ね』


『かっこいいー』


「ちゃかすなよー」


『カッコつけるのが悪い』


『うん、ゆみがわるいな』


「なんでよー。ストーリーなかったら、あんたらに人生はないでしょーお」


『うんまあね』


 今日はどんな物語を生きるかな、みんな……。そして私は。


 どんなお話をつむぐのかな……。


「少なくとも、もう子供に爆弾持たせて特攻なんてマネはさせないからね」


 と、私。


『おーらい』


 と、これも私。


 もうこれらも終わってしまった青春のいちページ。


 だけど、それでも私はまた自分に向き合うのだろう。週末、たった一日のこのトラベルを楽しみにして。


 鏡の前できゅっと口角をあげて、ようやく一段落ついた。





               END

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物語を、はじめよう。 れなれな(水木レナ) @rena-rena

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