五
窓の外の「ガア」というカラスの鳴き声で俺は目を覚ました。
畜生、頭が重い。吐きそうだ。端的に言って、最悪の気分だ。
それで、俺は一体何をしていたんだ。記憶が抜け落ちている。何も思い出せない。
何故俺は床の上で寝転がっていたんだ。
床に散らばっている万年筆はなんだ。大学ノートはなんだ。
どうして俺の部屋に飴玉なんかのビニール袋が二つも転がっているんだ。俺は幼稚園児かなにかか?誰が俺に餌付けをしようとした。神か?
まったく、一つも笑えない寝起きだ。
部屋の空気が淀んでいる。換気をしなくちゃいけない。窓を開けよう。
さあ、窓の外にはいつもの光景が広がっている。目の前の不愛想な高層マンションが日照権を阻害している。なんてことのない、当たり前の世界だ。
当たり前の世界で、今日も当たり前の日常を歩んでいくんだ。
ちっぽけな俺だけど、何者にもなれなかった俺だけど、でもいつかは何かになれるはずだ。
そうだ、いつかは俺自身になれるはずだ。
歩み続ければ、生き続ければ。
雨でも降っていたのか、遠くの空に虹がかかっていやがる。
まったく、いい景色だ。呑気なもんだ。
虹色の船に乗って あしどいずみ @ashido_izumi
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