井の中のJC、井戸を出てJKとなる。
杏
井の中のJC、井戸を出てJKとなる。
私は
* * *
「ねえ、
「えぇー。それくらい一人でいけよおぉ……」
「いいじゃんトイレくらい付いて来てくれたって」
「まあ
そう言って私は、子供扱いされて
トイレの洗面所には、私達のように何人かで連れ立って来ているのがほとんどだ。ただ付いて来ているだけで、友達を待っているだけのひとも結構いる。
でもその中に一人、誰と
一度だけ同じクラスだったことがあったが、友達がいないわけではないし、むしろ周りから
なんにせよ、彼女のような人はここにはあまりいない。だから、
あと一週間とちょっとでここともお別れだ。一ヵ月後には今着ているセーラー服からブレザーになる。白いタイを結ぶのはもうすっかり上手くなったが、ネクタイが結べるようになるか心配だ。
私と同じブレザーを着て、同じネクタイを結ぶ人はここには誰もいない。周りの環境が変われば、私はなにか変わるだろうか。変わらなかったとしても、せめて今まで見たことも聞いたこともない新しい世界を見ることはできないだろうか。
ぼんやりと考えながら用を足して個室から出る。洗面所で手を洗いながら
* * *
私は井の中の
ここまで落ちてはのぼり、落ちてはのぼりを
まだ私が幼い頃、春にしては少し暖か過ぎる日だった。井戸の中に一匹の
『一度、井戸の外に出てみるといいよ。きっと君も気に入るだろう。ここにはないものが沢山ある。こんな
私はその大きな『海』とやらをみてみたかった。やはり、
もう狭くて少しの日しか差さない井戸の中なんてこりごりだ。早くここからでて、違う世界を見てみたい。沢山、新しいものを見たい。
――――
* * *
桜の開花とともに新しい日常……もとい、人間関係が構築されていく。ちょっとずつ、なんて
着慣れないブレザーにチェックのスカート。結び慣れない
クラスメイトの名前と顔はまだ全員は覚えていないけれど、近くの席の人たちは覚えた。友達も何人かできた。ただ、この新しい友達を、本当に友達といえるほど仲がいいかとか、いままでの友達に比べてどれくらい仲がいいかとかは考えてもきりがないのでしばらくは考えないでおこうと思う。
「
「うわー椅子とかめんど」
「まだちょっと時間あるけどもう移動する?」
「あ、私職員室に用事あるから先行ってていいよ」
「いいよぉ、それくらい一緒にいくよー」
一人の顔が
「いや、ほんと、だいじょぶだから。先行ってて」
「そう?じゃ、じゃあ先に行ってるね!」
そう言って
* * *
数日前から入部した部活の練習始まったせいで、からだは慣れない運動に付いていけずに
校舎の外周を十周以上も走った
家の
「
そうつぶやきながら、田んぼをすいすいと泳ぎながら進む
窮屈で、
四月が終わる。三月までの同級生達は、どうしているだろう。私が
私もあんなふうに
小さな影が、視界の
気が付くと、暗闇の奥から一台の軽トラが現れ、
―――目を開くと、
井の中のJC、井戸を出てJKとなる。 杏 @kyou_simotuki
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