レベルが上がらず、BGMがアガりました。
ちびまるフォイ
曲の名は。
「食らえ!! 必殺ギガント・スラーーッシュ!!」
ズバァッ!!
勇者の放った斬撃はモンスターを真っ二つに切り裂いた。
「よし、経験値もだいぶたまったぞ。
魔王討伐まで先は長いと思ったけどコツコツレベルあげたかいがあった」
ピロリロリン♪
ちょうど期待していたファンファーレが鳴った。
ステータスをチェックした勇者だったがどこの数値も変わっていない。
「あれ? おかしいな? レベル上がったはずなのに数値変わってないぞ?」
よく見ると最下段に小さな文字が追加されていた。
BGM Lv2 ステレオ再生になりました
「はぁぁぁ!?」
ちょうどモンスターが襲ってきたので剣を構えると、
いままでどこからかなっていた戦闘BGMがステレオになっていた。
「お、おお……ステレオだと音に立体感がってちがーーう!!」
八つ当たりを兼ねてモンスターを全部やっつけた。
ふたたびファンファーレが鳴る。
「よし、今度こそレベルアップできたんだな」
BGM Lv3 デジタルサラウンド対応
「またBGMかよぉぉぉぉ!!!!」
勇者はブチ切れた。
ブチ切れたときのBGMも音質良くなっていた。いらねぇ。
「……というわけで、いくらレベルあげてもBGMレベルが上がるだけで
ちっとも強くなれないんだ。これじゃ魔王までの先は長い」
「えぇぇ」
仲間に自分の状況を伝えても絶望の返事しか返ってこなかった。
それでも勇者は仕方なしにレベルアップをつづけた。
BGM Lv20 曲がかっこよくなりました。
「……今度はなんだ?」
仲間といっしょにモンスターと戦うと、今までの曲調とがらりと変わり
名曲でありつつも疾走感に満ちたカッコイイバトルBGMになっていた。
「なにこの曲! すごいアガるんだけど!!」
「ウオオオ! 負けねぇでガンス!!」
「わしも年甲斐もなくやる気になっちまうわぃ!」
「すげぇ! BGMの力ってすげぇ!!」
BGMがかっちょよくなった影響からか仲間のパフォーマンスは大きく向上。
それぞれのレベルで出せるポテンシャル以上の活躍を見せた。
こんな効果がBGMにあるなんて。
「BGMレベル上げててよかった! このままどんどん上げていくぞ!!」
実は単に個人のレベルを上げるよりも効果的だった。
勇者一行はますますBGMのレベルアップにいそしんだ。
BGM Lv99 神曲になりました
「ついにここまできたか……!!」
戦闘BGMは聴けば誰もが盛り上がるような神曲になった。
仲間たちの潜在能力を引き出してくれる。
この曲を背景に戦って負ける気がしない。
「よし! 行くぞ! 魔王城へ!!」
勇者たちはついに最終決戦へと挑んだ。
けれど恐れはない。
勇者たちのバックグラウンドにはあの神曲があるのだから。
「ブハハハハ!! よくぞその程度のレベルでここまで来たな勇者よ!」
「フッ……。魔王、俺たちの強さはパラメータだけじゃないんだぜ」
「な、なにぃ!?」
「誰もが神曲だと認めるほどの曲を背景に戦えば、どんな相手にも負けない!!」
最終決戦がはじまり、神曲BGMが再生された。
「なんだこの曲は!? めっちゃいい曲やんけ!! 気分アガるわぁぁぁぁぁあ!!!!!!!」
魔王もめっちゃ強くなった。
この日以降、この曲の名前は『魔王様圧勝のテーマ』となった。
レベルが上がらず、BGMがアガりました。 ちびまるフォイ @firestorage
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