罪の花


花盗人に

罪はない


美しく咲く

花こそ罪よ


されば我は

罪を摘む


女人よ、汝

花なれば





嬢ちゃん

いい娘で

ねんねしな


かあさん

いぬとて

泣くじゃない


雪は白かろ

冷たかろ


嬢ちゃん一人で

さみしかろ



寒い寒い雪の降る夜に、

おれのベッドに雌餓鬼を

つれこんからってなんだ。


慈善だよ、慈善事業だ。

唐変木のくされ裁判官。




かなしい眼をした鳥達よ

やさしい肌をした魚達よ


おまえ達に俺のやり切れぬ

気持ちがわかるのか


鳥は囀りをやめている

池は沈黙したままだ


それにしても、ジョゼよ

おまえはなぜこなかった




さみだれ打つ

おまえの黒髪


さらにやさしい

おまえの心


雨にうなだれる

百合に似た


おまえの白い

頸筋(くびすじ)に

接吻しよう


ふるえわななく

接吻を……



あんたは

本当にやさしい

いい娘だったので


心変わりを

どうしてせめられよう



裏切るのも

裏切られるのも


これがはじめてって

わけじゃないさ



そういって

笑おうとしたが


口もとが歪んで

何故か、笑えなかったよ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

『屍臭期』――架空都市詩編 壺中天 @kotyuuten

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ