『屍臭期』――架空都市詩編

壺中天

ドンファンまがい


ドンファンまがいの悪党を

気取ってみたものの

とうてい様になりはしなかった。


女にゃモテんし

フラれるし、


借金だらけで

首は回らんわ、


刃物沙汰で

手が後ろに回るわ。



ああ、どうでもいい。

もう、どうでもいい。


この拳銃で、

頭をぶちぬこうか。


いっしょに死のうぜ

なあ、ルイーズ?





夜が心の闇ならば、

月は涙のしずくなり。


闇つきまとう闇月夜。

されど、病みつきやめられぬ。


夜の巷をうろついて、

酔いどれ詩人がゲロを吐く。


もらい手ないのが売れ残り、

金のないのが首を吊る。


なべてこの世はこともなし。

へ!




女よ、雨が降っている。

長く降りつづく雨だ。


おれはといえば、

いささか頭痛がした。


それでおまえの胸の香でも

嗅ぎに来たってわけだ。


なのに空っぽの部屋に、

黴臭い匂いがするばかり。



テメェ、いったい

どこへいきやがった。


おれに愛想つかして

逃げだしたのか。


ほかの男でも

銜えこんでるか。


はてさてどっちか、

それとも両方か。


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