Dr.チートンの航海日誌
フリーワンライ企画2014年7月11日より
使用お題:その声に潜む痛みを見つけ出せ/伸ばした手は
Dr.チートンと異次元モンスターの誕生秘話
XX日目
ついにあの奴隷が逃げ出した。しかも、研究室を半壊され、リオンクリスタル・アルファを持ち出されるとは、迂闊であった。
しかし私の手には、もう1つのクリスタルが残されている。私の持つ科学力であればこれ1つで十分だ。
XX日目
私の発明した「エモーションサーチ」で、残されたクリスタル――リオンクリスタル・ベータが示す、私の下僕たちを探した。
クリスタル・ベータは、これまでの研究から、生物の負の
そして4体の反応があった。心に闇を抱えた、素晴らしき私の下僕になるべき生物の反応だ。
その声に潜む、痛みを探し出すのだ。
XX日目 ア・ナローグ&デ・ジタール
最初に私の宇宙船に迎え入れたのは、壊れた二種類の時計だった。7セグメントの液晶を持つ腕時計と、ベルの鳴るピエロを模したアナログ時計。とてつもなく拙い技術で作られた時計に冷笑を浴びせつつも、私は4つに割ったクリスタル・ベータの欠片と、時計たちを異次元モンスター製造装置にかけ、新たな生物を生み出した。
彼らは地球人に飽きられたことに怒りを抱いていた。無機物でも負のエナジーを生み出せる驚きを私は隠せなかった。クリスタル・ベータ! 大いなる力を秘めた宇宙鉱物よ! しかしがらくたを元にしたために、若干精神状態が幼いのが欠点だ。私との意思疎通が難しい。やはり今度は哺乳類を選ぶべきか。
XX日目 カマセイヌ
次に迎え入れたのは、大きな体躯の犬という生物だった。非常に獰猛ではあったが、その心の中はまるで何も無く、常に何かを渇望してやまない、欲望が渦巻いていた。たまたま怪我をしている所を攫ってこれたのは、私にとっては幸運だったのだろう。奴が弱っていなければ、私が逆に食い殺されていたに違いない。
しかしここで事故が起きた。装置作動中に不具合が置き、不完全なままでモンスターが生まれてしまったのだ。あまりの凶暴さに、彼にスペース・デブリで出来た拘束具を装着させるだけで精一杯だった。しつけさえ出来れば奴は最強の戦士になるだろう。調教役を探さねば。私の片腕となる存在を。
XX日目 サルハーフ
夜の闇に紛れ、私は反応のあった場所――滅び行く国の寂れた研究所――に降り立った。
そこには、ギャアギャアと叫び鳴く一匹の猿という生物が居た。恐ろしく強力な負エナジーを感じ、私は思わずほくそ微笑んだことを覚えている。
猿は哀れな叫びをあげながら、己が爪が真っ赤に染まるのも厭わずに、檻を叩いていた。素晴らしい負のエナジーだった。ふと、私に同調の波が襲った。全てを憎み、全てに呪詛を吐き、しかしそれでも生きつづけているその執念は、故郷の星を追い出された私に似ていたのだ。
「お前は、選ばれた存在だ」
――私が欲しかった言葉を、今、お前に与えよう。
猿は負のエネルギーに似合わぬ、きらきらと輝く瞳で私を見つめ、その毛むくじゃらの手を伸ばしてきた。
そして猿はサルハーフになり、忠誠心の高い私の良き片腕となり、カマセイヌの調教役となった。
これで準備は整った。後は好機を待つのみだ。
XX日目
ついに決戦のときは来た。
最強の異次元モンスターたちを引きつれ、クリスタル・アルファを奪還するときがやってきたのだ。
おろかな地球人がアルファの力を解放したのだ。アルファとベータ、どちらの力も手に入れれば、私はこの地球という星をすぐにでも支配することが出来る。
見ていろ地球人ども。私の力に屈服し、そして最後には滅びるがいい。私の星と同じように……。
(ここでデータは途切れている……)
終
超絶変身ユカリオン 服部匠 @mata2gozyodanwo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます