率直にいってしまうと、「アニメを見ている心地」でした。文章を読んでいるのにいわゆる女児アニメとして放映されていたのでは、と感じてしまうような描写力。
主人公の由香利は心優しく、まっすぐな少女です。そんな彼女の視点で進む描写はライトで読みやすく、その文体も合わせてアニメと感じさせるような不可思議な軽快さがあります。ともすれば滑稽とされかねない独特の敵のキャラデザも、この文体の中では「世界を作るパーツ」として話の楽しみかたを支えるようで、世界のかみあいかたが楽しかったです。
そういう軽やかななかで軽やかに終わる、のではなく、とある件ではぎゅっと胸を締め付けます。それでも、楽しませて一気に読ませてくれるだけの楽しさ、王道の魅力がたくさんつまっています。
変身ヒーローヒロインが好きだった、優しい人に憧れた、そんな人たちに。
そしてあたたかさが届く人に、ぜひおすすめの一作です。