君の呼吸

君に逢い初めて自分の右足の小指の爪の歪さを知る



君の手の温かさなど要らなくてカラアゲの鶏むね肉を揉む



真ん中のあるドーナツは意地悪で君を覗き見させてくれない



瞳孔を入り口にしてゆっくりと君の中へと沈む 視線よ



変わることも悪くないさと言うようにそっと染まった茶色いうどん



次の風を待ちわびているTシャツは白 ハンガーを抜け出せ空へ



あと十五センチメートル君を待つ 首のほくろは案外茶色い




半月の明かり見つめる指先に君の呼吸を教えてください




街を練り上げる人らの行進をレンズに映す自販機の朝



「唯一の武器は三十一音式散弾銃、明日をぶち抜け」



コンタクトレンズを洗う朝に似たアイスコーヒーひとつください



文字「S」の澱みないこと キスに似て君のイニシャルらしいと思う

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短歌もどき。そのご。 桜枝 巧 @ouetakumi

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