第15話


「あ、少年」


学校からの帰り道。

いつもの橋の下。


そう言って手をひらひらと振ったお姉さん。

けれどその足元は、もう不安定ではない。


「そこ、僕の場所なんだけど」

「そんなの決まってたっけ〜?」

「・・・人でなし。」


僕の言葉にお姉さんが笑う。

あれから見るようになった、お姉さんの新しい笑顔。


もう悲しさの影は、ない。


前まで僕が僕がランドセルを下ろして座っていた石段には、お姉さんが座っていて。


僕の日々の抵抗も虚しく、

結局いつも石段のそばのコンクリートに座り込む事になる。


「どう?サッカーは上達した?」

「全然。井上の教え方が下手なんだよ」

「そうやってすぐ人のせいにするのがだめなんだよな〜」


ジトッと、横目で睨めばくすくすと笑う。


風が吹いて、お姉さんの長い髪とスカートをゆらした。






人間はそんなに賢くない。

救いようのないくらい傷つけ合って、

どうしようもない所まで堕ちる事もある。



けれど大嫌いな自分の事を大好きだと言ってくれる人がいて、

どうでもいいと投げ出した自分の事を大切にしてくれる人がいる。

それでもう、きっと十分で。





どうしようもない事ばかりだけど



僕らはそれでも、

この世界で生きていくんだろう。

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僕らはそれでも、 なつめのり @natsu_haru

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