第15話
「あ、少年」
学校からの帰り道。
いつもの橋の下。
そう言って手をひらひらと振ったお姉さん。
けれどその足元は、もう不安定ではない。
「そこ、僕の場所なんだけど」
「そんなの決まってたっけ〜?」
「・・・人でなし。」
僕の言葉にお姉さんが笑う。
あれから見るようになった、お姉さんの新しい笑顔。
もう悲しさの影は、ない。
前まで僕が僕がランドセルを下ろして座っていた石段には、お姉さんが座っていて。
僕の日々の抵抗も虚しく、
結局いつも石段のそばのコンクリートに座り込む事になる。
「どう?サッカーは上達した?」
「全然。井上の教え方が下手なんだよ」
「そうやってすぐ人のせいにするのがだめなんだよな〜」
ジトッと、横目で睨めばくすくすと笑う。
風が吹いて、お姉さんの長い髪とスカートをゆらした。
人間はそんなに賢くない。
救いようのないくらい傷つけ合って、
どうしようもない所まで堕ちる事もある。
けれど大嫌いな自分の事を大好きだと言ってくれる人がいて、
どうでもいいと投げ出した自分の事を大切にしてくれる人がいる。
それでもう、きっと十分で。
どうしようもない事ばかりだけど
僕らはそれでも、
この世界で生きていくんだろう。
僕らはそれでも、 なつめのり @natsu_haru
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます