第3話 少女の過去
少女が変わってしまった日
それは暖かな春の日だった。
明るく暖かな日差しの下、
無邪気に笑う少女とその母親がいた。
リーファ「エイミー、あんまり遠くに言っちゃダメよ?」
エイミー「うん!わかってるわ!お母様」
原っぱを駆け回る少女の姿
太陽に照らされ輝いていた。
少女は幸せだった。
────この幸せがつかの間とも知らずに。
〜そして夕方〜
夕日に照らされ帰宅する母娘。
母が寂しそうに呟いた。
リーファ「お父様今日帰ってこないかもねぇ‥‥」
エイミー「‥‥帰ってきてほしいなぁ。」
エイミーを慰めるように母は言った。
リーファ「その分私が遊んであげるわ
お父様お仕事だからしょうがないのよ。」
エイミー「むぅ...休日にはいーっぱい遊んでもらう...!」
リーファ「そうしましょう」
意味ありげに母は目を伏せた。
────────────────────
〜そして帰宅〜
リーファ「ただいまぁ」
「‥‥。」
返事がない。
何故だろうか。
部屋へと進んでみた。
部屋に入り真っ先に2人の目に入ったものは
────血にまみれた床だった。
床には血とともに肉片が散らばっていた。
父親と思われるその肉片からはすさまじい悪臭がした。
リーファ「‥‥‥‥‥‥っ!!見ちゃダメ!!!」
エイミーの目を慌てて覆った。
だが遅かった。
残酷な父親の姿が幼いエイミーの目に映っていた。
エイミー「い‥‥い...‥いやぁぁあああああああ!!!!」
泣き叫ぶエイミーとは別に驚いているだけの母親。
そこに近づく誰か‥‥。
マフィア1「うるせぇ餓鬼だな。」
リーファ「なんでこんなこと‥‥もっとこっそりしてっていったじゃない!!
大事な娘に何を見せるのよ!!!」
マフィア1「あぁ?知らねぇよ。とっとと金だせよ。」
リーファ「......これでいいでしょ?」
エイミーの頭には追いつかなかった。
母とおそらく父を殺しただろう人物が会話をしている。
エイミーの泣き叫ぶ声はピタリと止んでいた。
お金‥‥?母は何をしているのだろう。
ただ、いつもの母とは違った。
冷たく、冷静な母だった。
マフィア1「‥‥チッ‥‥足りねぇな!!!もっと寄越せよ、おらぁ!!!」
怒鳴りながら母を突き飛ばす。
リーファ「キャッ!!この額のはずだったでしょ!?」
マフィア1「いーや、違うね。もう1人殺すからな!!」
そう言い放ったマフィアの目はイカれていた。
呆然と2人を見つめるエイミーのもとに鋭いナイフをもったマフィアが
近づいてきた。
エイミーは立てなかった。
怖いから?死を覚悟しているから?
母親を置いていきたくなかったから?
なぜかわからない。ただただ逃げてはだめだと思ったんだ。
リーファ「エイミーは!!エイミーだけは殺さないで!
殺すのはダイだけだったでしょ!?」
母が泣き叫びながら言ったものの
マフィアの放った言葉は冷酷そのものだった。
マフィア1「知らない奴は信用しないほうがいいぜ。」
ニンマリ笑ったマフィアはナイフを突き立てエイミーの腹を刺した。
グチャ...
エイミー「‥‥‥‥‥‥カハッ」
腹からも、口からも大量の血が吹き出た。
マフィアは突き立てたナイフで腹の中をかき混ぜながら言った。
グチュグチュ‥‥
マフィア1「じゃあな、嬢ちゃんよ」
そう言い放つと死にかけのエイミーに追い打ちをかけるように
もう1本のナイフで心臓を刺した。
ドスッ
リーファ「エイミー!!!!エイミー!!!いやぁああああああ!!!」
母の泣き叫ぶ声を聞きながらエイミーは暗闇に落ちていった。
目が覚めたらそこにマフィアと死にそうな母の姿があった。
傷口のない自分の体に違和感を覚えた。
────エイミーは死ななかったんだ。
なぜ、なぜだ?
しかし自分にとっては好都合だ。
父の敵をとってやる!!
あの残虐なマフィアを殺してやる!!!
エイミーの心の中は怒りに満ちていた。
リーファ「‥‥エ、エイミー‥‥?生きて‥‥」
マフィア1「あ?何を言って‥‥‥‥‥‥っ!!!!」
エイミー「なんで‥‥なんでお父様を殺した!!!
お前も殺してやる!!!!」
マフィア1「ハッ!俺はただリーファってやつにお願いされたんだよ!
旦那を殺してくれって!
‥‥ほらよ!殺れるもんなら殺ってみな!この糞ガキ!!」
マフィアが投げたナイフを拾って死に物狂いで刺しに行った。
エイミー「あああああああ!!!!!!」
マフィア1「雑魚いな!」
余裕で避けられてしまった。
でもエイミーは何かに取り憑かれたように刺しに行く。
────その時だった。
リーファがマフィアに覆いかぶさるように抱きついた。
リーファ「今‥‥よ、刺して‥‥私ごと‥‥。」
マフィア1「どけ!!!このクソ女!!!」
エイミーは一瞬の迷いもなく母ごとマフィアを刺した。
〈何度も、何度も〉
ドスッドスッ!!!
気がついたらリーファもマフィアも息絶えていた。
エイミーは正気に戻った、その瞬間泣き叫んだ。
エイミー「あああああああああ!!!!!」
帰ってきたら父が死んでいたこと。
父を殺そうとしたのが母だったこと。
母がマフィアを雇ったこと。
そして
────マフィアと母を殺してしまったこと。
全てを受け入れるのに時間がかかった。
父も母も大好きだった。
なのに‥‥今はいない‥‥独りぼっちだ。
私は独り‥。
その瞬間たくさんの何かが消えていく気がした。
あぁ‥‥死にたい。
大好きな父と母がいなくなり
残っているのは‥‥
家の中にある両親とマフィアの死体だけ。
生きていても仕方ない。
そう思い遺書を書いた。
今日あった全ての出来事と伝えたいことを書いたが
名前だけ思い出せなかった。
自分はなんという名だったんだ。
はやく死にたいと思う気持ちで今の自分にピッタリの名前を書いた。
『alone‥‥独り。』
そして遺書を日記に添えてナイフで喉をかっ切った。
プシュッ
頭が回る。もうすぐ死ぬだろう。目を閉じ死ぬ時を待った。
10分が経った。
おかしい。切った首を確認する。
ザラザラと固まった血の感触はあるが
傷口がない。
私は‥‥‥‥自分で死ねないのか?
だったら誰かに殺してもらうだけ。
生きるという選択肢はない。
────こうして少女はほとんどの感情を失い
殺してくれる人を探す旅に出た。
不死嬢 虹音 @_RAIN_
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