フィットネスボールを思い浮かべて欲しい。ボールに座れば凹むし、リズムを刻んで体重を加減すればプヨプヨと弾む。ボールの中には何かが存在する。でも、ボールの表層をナイフで切り刻んでも何も見付からない。無色透明な空気だから、当然だけど。それと似ている気がします。
つまり、読者が何を詰め込むかで、読後の感想は変わると思います。
私の場合、旧世代と新世代の違いをもっと浮き彫りにして欲しかったな、と思いました。例え話でも、出生以外に、二、三の具体的説明があると納得できたんですけど…。
250年の航海時間は江戸幕府の開闢から維新までの時間に相当するので、色々と変化するのは当たり前。船内世界の変遷は理解したけど、人間の感性とか、そこら辺がね。
終わり方も、これもあり、とは思うけど、作者の見解なり展開予想を聞いてみたかったかな。
要望点を書き連ねましたが、だから星2つなのではなく、短編にはMAX2つが信条だからです。
「方程式モノ」アンソロジー企画ということで投稿された作品ではありますが、これはその「方程式モノ」そのものへの鮮やかな挑戦。
そもそも「方程式モノ」は、シンプルであるが故に冷酷であるというのがそのキモ。
核となる構造がこの「冷たい方程式」に則っており、それを担うのがAIの「パル」の役割。彼(?)は様々な項や変数を計算し、最適で冷徹な解を導き出す。
しかし、それは様々な不確定要素に晒され、そのたび方程式は組みなおされることとなります。その果てに導き出された解答とは――
読み応えのある本格SF。
項を無限に増やしていくことができれば、人間の社会も方程式であらわせるのだろうか――最終的に示された「解」ではなく「式」そのものに、そんな感想を抱きました。
ぜひ一読ください。