無重力ムーンサルトプレス

元村尋

空に焦がれて

わたしは、人間

機械の力を借りない限り、大空に行けない、地に足をつけて生きている生物。


わたしの夢はただ一つ、大空を飛ぶこと

幼い頃から抱いた夢は高校生になった今でも変わらない。


飛ぶと言っても飛行士とかパイロットとかではない。

この身一つで、宙を舞うのがわたしの夢。



とはいえど、宙を舞うのは簡単な事ではない。

小学生時代には教室の棚から飛び降りて、担任から大目玉をくらった。

中学生時代には教室のある2階から雪が積もったグラウンドに飛び降りた、その時には体操の様にひねりを加えて、怪我はしなかったがやはり大目玉をくらった、両親も学校に呼び出されて、お父さんからゲンコツも1発もらった。




どう飛ぶか、わたしの頭はそれでいっぱいになる


ムササビの様に飛ぶのも速そうで楽しそうだ

体操選手の様にくるくる回ってもいいかもしれない

最近見たのはプロレス、トペスイシーダ、ラ・ケブラーダ、ムーンサルトプレス...参考になる技ばかり!




どうしてそんなに飛びたいのか、と問われれば答えはただ一つ。

この世界は、わたしには狭すぎるのだ。


幼い頃言われた「女の子らしくあれ」

過去の友人に言われた「あなたって変な子」

他にもいつまでそんな夢を見てるんだとか、お前だけが変わっている、一族の恥だとか。

窮屈極まりない環境に生まれてしまったからこそ、鳥が羨ましかったのだ、身一つで自由に大空を馳せる鳥が。


わたしにとっては、孤独になろうが異端児と呼ばれることとか、他人の評価とかはどうでもいいのだ、わたしはわたしでいたいだけなのに!世論や価値観がわたしを縛り付けるのが苦で仕方ない。


あぁ、この背中に翼でも生えてくれないだろうか?

片翼だって、不格好だっていいんだ、数cmだけでも、誰にも頼らず飛べたらそれでいい



この窮屈な世界から飛び出せるなら





わたしはいつも近所の港から海へ飛ぶ、おじさん達からは「飛魚ちゃん」なんてあだ名も貰って。



大嫌いなコンクリートの大地を思いっきり踏んずけて、飛んで、くるくる回って、嫌な事も忘れたいことも海面で押し潰すように



未だ翼は手に入らない、でもわたしは






このクソみたいな世界から、飛んでみせる

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