宇宙船に思わぬ乗客が紛れ込んだために、燃料や酸素が足りなくなりこのままでは航行不可能に。さて乗組員はこの密航者をどう扱うべきか?
こうしたシチュエーションを扱ったSF小説はトム・ゴドウィンの『冷たい方程式』になぞらえて「方程式もの」と呼ばれています。本作もそんな「方程式もの」の一つ。
とある運輸会社の運転士を勤める平山匡は、今日も今日とてワンオペで宇宙船に乗り組み遠い星から地球へと荷物を運ぶ。しかし、今回はいつもと違う出来事が。なんと若い女性の密航者が船内に忍び込んでいたのだ。
普通なら乗客が一人増えたぐらい何ともないはずなのだが、平山が勤める会社は超ブラック企業! 空気も燃料もギリギリだし、ついでに荷物の積載量は本来の制限である60%を超える110%! たった一人を追加する余裕すらないのだ!
この過酷な勤務形態が生んだ悲劇的状況を前に平山は、そして密航者はどのような決断を下すのか!?
古典SFで扱われた題材を現代社会の風刺と上手く結び付け、見事に今の時代にアップデートさせた本作品。「冷たい方程式」というフレーズに新たな解釈を加える、ショートショートならではの切れ味鋭いラストは必見!
(「もしかしてブラック!? お仕事が大変に思える作品」4選/文=柿崎 憲)
永井氏は「長野市役所ダンジョン課(*)」を書いてるし、公務員かもしれません。公務員目線でのドンデン返しと感じました。
(*)人気作品と知ってますが、未読です。今年中には読みます。
また、物流業界にも知見があるようです。永井氏の指摘は運転手の過重労働に止まらず、ヤマト運輸のニュースだけがネタとは思えません。実際ああいう感じみたいです。
但し、一昔前とは言わないけれど、数年前までの話。現在は運送会社が荷主を選ぶ時代に突入してます。
背景には人手不足の問題が有ります。需要と供給の相対観が逆転したんですね。神の見えざる手。本作品を読んでいて、これも冷たい方程式の1つだと思いました。
星の数は、短編にはMAX2つが信条だからです。