最終話 いつか来るその日まで
ゼク・レムレクスの襲撃から数日。大災害にも匹敵する被害ではあったが、シエルの――と言うよりはシエルの星の技術のおかげで驚く程綺麗に復旧できた。
シエル曰く。
「ベルにも搭載されている自己修復機能をより高度にした物です。簡単に言えば物質の形状を過去に遡って復元する装置で、まずは破損した物体を解析して元の形状を分析。どこまで戻したいのかを決めた後に、別の特殊なナノマシンを使って一旦分子レベルまで解体し、足りない部分は更に特殊な別のナノマシンとマテリアルを合成したもので補って結合、親和させて再構築をはかり――」
――まぁ要するに、なんか凄いナノマシンと技術を使って町を元に戻す事が出来たと、そう言う事だった。
向こうの世界の技術はこっちの世界とは次元が違いすぎて、下手に理論的な解説をするよりいっそ魔法を使ったとか、そう言う説明の方がかえって理解し易い。だから俺も魔法で元に戻ったと、そう思う事にした。
「結局、もう界獣が出てくる事は無いん?」
いつものとおりに庭で体育座りをしているベルに問い掛ける。
『首謀者がいなくなった以上、新手が来る事は考え難い。今回のミッションはコンプリートしたと言えるだろう』
「そうか。じゃあベル達はこれからどうするん?」
『それについてだが、本星へ帰還する事が決定した』
「えっ、帰っちゃうの!? いつ!?」
『丁度帰還準備が整ったところだ。これより帰還する』
いきなりすぎる話に、驚きを隠せない。
『ひとまず界獣の脅威は去った。そうであれば我々の地球滞在の目的は果たしたものと、そう判断した』
「それにしたって、急すぎる話だな……」
『それを言うのなら、元々我々が地球に来る事自体が急な話だった。まだ我々と地球人が交流をはかるには早すぎる』
「それはまぁ……確かにそうなのかもしないけど……」
『あくまでも今は時期尚早と言うだけだ。いつかまた、この地球に我々が訪れることになるだろう。今度はとおい銀河の知的生命体と誼を結ぶ為の使者として』
「そうか……それでも、寂しくなるな」
この何日かはとにかく大変な日々だったけど、楽しくもあった。ベル達のおかげだ。それだけに、別れはすごく惜しい。
「これで永遠のお別れではありません。また会えますよ」
再会を本当に確信しているのか、シエルの声に寂しさは感じられない。
「そうか……いや、そうなのかも、な」
これだけのあい……合縁なんちゃらな関係だったんだ。いつかまためぐり合う時が来るのかもな。
「ですから! 再開した時に忘れる事が無いよう、今の内に2人の愛を存分に深めましょう!」
「なんでそうなる!?」
「では早速愛の育成と参りましょう! 私の準備は万全ですよ」
人の話を聞いてねぇ!?
『さて、そろそろ時間だ。名残惜しいが帰るとしよう。シエル、その辺で終わりにしてくれ』
ベルの声を聞いて、渋々と言った感じではあるが、シエルはコクピットの中へ入っていく。
『コタロー、我々への今日までの協力、心の底から感謝する。これで別れとなるが、そう遠く無い未来、私達の世界とこの世界が正しく交流する時、その時はまた会おう』
「なんでしたら私個人でこっそりコタロー様に会いに行きます! ですからその時は存分に小作り――」
シエルが言い終わる前にハッチがしまる
ベルは、光の速さで雲一つ無い晴れ空の向こうに飛んでいった。
――勢いよく飛ぶもんだから、またベルの肩が屋根に当たって、折角直ったのにまたボロボロになったがな。
「この屋根……どうするんだ……?」
俺の問い掛けに、答える者はいない。
俺はなんとも微妙な気持ちで巨大スーパーロボットの帰りを見送るのであった。
スーパーロボットVS大界獣軍団 小田信永 @oratorio0004
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