四
イジメが起きるのには、何かしらの理由がある。
自分が正義だと信じたいから。
相手が嫌いだから。
自分達の欲求で人を傷つけているのだ。これじゃ、大人がやめろやめろと言っても、欲求で動く人間に関しちゃ、無意味に近いだろう。イジメに変わる欲求が見つかるまで、イジメは終わらないだろう。
それが、中学生の時に思った心情だ。イジメを無くすことは不可能なのかも知れない。誰かが笑うには、誰かが泣かなければならないのかも知れない。だが彼女は違う。彼女はイジメられようとにこにこ笑っている。イジメられているのにだ。以前僕は、その事について問い掛けてみた。すると彼女は、
「誰かが幸せになるには、誰かが犠牲にならなければならない。皆が幸せなら私は嬉しいの」
と、彼女は無邪気に笑った。僕は彼女が凄いと本気で思った。僕はこんな凄い人を死なせてはいけない、そう思う。
そう思いながら、僕は帰った。家に着くと懐かしい声が聞こえた。ばあちゃん、じいちゃんの声だ。僕は涙が出た。それは嘘偽りのない“逢いたかった”の涙だった。僕はばあちゃんに抱きついた。するとばあちゃんは、急に抱きついてきた孫に驚きながらもそっと手を添え抱き返してくれた。
「愛斗に抱きついたのは、いつぶりだろうね」
「感情を棄ててたからね」
「感情、戻ったのかい?」
「ある人に出逢って、変われた」
それから僕とばあちゃんは色んなことを話した。未来から来たことは省いて。あまり未来から来たことに関して話すなと優太に言われたからだ。ばあちゃんはうんうんとうなづき涙を流したいた。
「って事は、愛斗はその人に恩返しがしたいって事?」
「そゆこと」
「本当に変わったねぇ」
「だろ?」
ばあちゃんは終始微笑んでいた。ばあちゃんは時計を見ると、「いけない!」と言って、台所に行った。どうやら、夕飯の準備がまだだったらしい。僕は部屋に戻ろうとした。すると、玄関からまたもや懐かしい声が聞こえた。じいちゃんだった。僕は方向転換し、じいちゃんの方へ駆け寄った。じいちゃんは驚いた様子で僕を見ている。
「な、何だ急に!」
「じいちゃん!大好きだ!」
「おいおいおい!」
僕はばあちゃんと同じ様に話した。勿論、未来の事を除いて。
じいちゃんもうなずいて、僕の頭を撫でてくれた。僕は照れくさかった。
僕は心と体を弾ませながら、自分の部屋に戻った。部屋には、何故か優太がいて、悲鳴をあげてしまった。ばあちゃんが「何!?」と言ってきたので、僕は、「ゴキブリ!」とだけ言った。
「何でいんの!?」
「俺らの時代では、瞬間移動も出来るんだよ。こんなのもできないと地球滅亡なんか防げないでしょ」
「それはわかったけど、何で来たの?」
「おいおい、明日何の日か分かってんだろうな?」
「え…、あ!明日は真琴の命日…」
「そう言うことだ。わかってるな?明日はなんとしても、真琴を死なせるな。この“大いなる過ち”はいずれ“大いなる成功”へとなる」
「おう。任せとけ!」
僕は、優太が帰ったことを確認して、布団に潜った。
明日、運命が変わる。
僕と、
真琴の。
世界も。
僕は決めていた。明日は真琴とデートすると。
今日は、前だったら真琴が死ぬ日だ。僕は絶対に真琴を死なせてはならない。僕はこの日を避けるため、僕は真琴をデートに誘った。
今日はデートをする日だ。別に二人きりで緊張している訳では無い。僕の行動一つで真琴の生死を分ける。そっちの方の緊張だ。デートの場所はレイクタウンだ。僕が初めて真琴と友達と出掛けた場所。あの時はつまらないと思っていたかも知れないが、今思うととても嬉しかった。僕は時間通りに待ち合わせ場所の駅にいた。待ち合わせ場所も前回と同じ場所だった。彼女は、五分遅れてやってきた。深めの青のTシャツに、白のスカートといったラフな格好だったが、それでも彼女は可愛かった。
「行こうか」
僕はそう言い、彼女に手を差し伸べた。彼女は照れながら僕の手を握った。レイクタウンにつくと、僕達は、色んなことをした。プリクラを撮ったり、食事したり、買い物をしたり、気付くと真琴が死んでいたであろう時間はとっくのとうに過ぎていた。よし。ひとまず第一関門は突破した。その後僕らは解散した。僕は良かったと安心した。
だが気付いていなかった。
気付くわけが無かった。
この行動が“大いなる過ち”ではなく、“本当の過ち”だと言うことに。
何回も咲く花のような。 いとあはれ @2002_sky
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