はじまり
村崎 晶
第1話 初心忘るべからず
これは決意や覚悟などという堅苦しいものではない。単なる気まぐれか、遊びの一環であることをはじめに宣言しておく。遊びであるのだから、散歩感覚で気楽に、自分のペースで歩いて行けばよろしい。
きっかけ
事の発端はよくある話で、今の仕事で食っていけるのか疑問に思った事だ。自分の技術に自信が持てず、いつか首を切られるのではないかと不安な日々を送っている。
自分にできるかどうかわからないことを任せられ、混乱したまま作成した資料を提出し、評価を下される。その評価も曖昧だ。一つ分かることは、仕事の出来がダメダメだということだ。こんな状況にいつまで耐えられるか、自分でも見ものである。もう一人の私が頭上から他人事のように高みの見物を決め込んでいる。あの野郎、覚えていろよ。天に唾を吐いたところで自分に返ってくるだけなのでこの辺にしといてやる。
そんな状況の最中、友人から「君は文章を書くと良いよ!」と勧められた。付き合いの長い友人からの、その言葉が嬉しかった。私は自信が持てない時、信頼する人物の言ったことを信じることにしている。親愛なる友人が褒めてくれたのだから、文章なら私にもできることがあるかもしれないと、そう思った。もともと遊びでTRPGという、紙とペンとサイコロで遊べるアナログゲームのシナリオを書いていたこともあり、小説を書くこともなんとか形にできそうだ。でも成功するかわからない。だからこうして小さくはじめることにした。
なぜ文章なのか
文章は、仕事でも応用可能な技術でもあり、妄想や空想を表現する遊びでもある。特に後者は現実逃避に打ってつけだ。私は現実逃避が大好きだ。できることなら一生逃げ続けていきたい所存である。仕事が嫌になったら散歩に行くし、散歩に疲れたらテディベアを作るし、針に糸を通すのに嫌気がさしたら絵を描くし、ペンを握るのも億劫になったらゲームにふけり、ブルーライトに目がやられたら寝る。多趣味といえば聞こえは良いが、器用貧乏なのだ。
様々な逃避方法の中からなぜ文章を選んだか。それはいつでも、どこでも好きなところで書けるからだ。最悪スマホさえあれば書ける。これは文章の長所であり短所でもある。どこでも書けるがゆえ、文章からは逃げられない。辞めたくなったらどうしよう。辞めたくなった時に考えよう、それがいい。
5分で読めるシリーズ
5分で読める定義とは、4,000字以内の文字数であること。これだけ。大人が1分間に読める文字数は800文字らしい。5倍して4000文字となる。ここまでだいたい1000字程度。この4倍か。ブログにしては長いかもしれないと思いつつ、内心まぁいっかで済ませている適当な自分がいる。遊びであるのだから、気楽に、適当に行こう。
なぜ短編を書こうと思ったかというと、これまた単純な理由で、長編が書けないのである。練習はしているもののなかなか形にならないのがストレスになり、継続しないと思ったのだ。私はどうもせっかちなところがあるようで、完成まで時間がかかると胸がざわざわしてしまう。間が空いてしまったら、熱が冷めてしまうのではないか、待たせてしまっている友人や登場人物たちに申し訳ない。そんな気持ちが先行して筆が乗らなくなっては本末転倒だ。だからできる範囲でルールを作り、それに従って物語を書くことにした。
どんな物語を書くか、その辺りはノープランである。とりあえずカクヨムとブログに登録してしまった。見切り発車も良いところである。そのうちtwitterも始めて、日々の活動報告でもしようかと考えている。無論、ノープランである。
はじまりのおわりに
君は、いつも頑張りすぎているんだ。だから時には休みたまえ。好きなものを見て、好きなことで遊んで、好きなものを作るんだ。その自由を獲得するために、見切り発車を決め込んだのだろう。楽しもう、心ゆくまで。もう一人の私がワイングラスを揺らしながら偉そうに語りかける。私にも一杯くれ。つまみは豚のパテが良い。
思えば良い時代に生まれたものだ。己が生み出した作品をすぐに世界へ発信できる。やろうと思えば、その日のうちにどんなことだって始められる。実に素晴らしい時代。思い立ったが吉日とはよく言ったものだ。とはいえ、まだまだ未熟の青リンゴ。実るか、枯れるか、切り倒されるか、あるいは自ら根こそぎ引っこ抜くか。やはり、見ものである。
これは遊びだ。現実から逃げるための脱出ゲーム。私は逃げ切るぞ、現実から。私は綴るぞ、物語を。
はじまり 村崎 晶 @murasaki_sho
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