エピローグ

出逢い、そして――。

 一通りの教育はすませて、奨学金で大学へ通う純。天使はもう見えない。姿を隠すのがうまくなった。彼が奇跡を信じなくなったせいとかではない。


正悟しょうごのやつ、約束わすれちまったのかあ」


 ぼやく純をチラチラと見る女子たち。彼はみごとな美青年に育った。


「なんだよ。わすれたんなら仕方ない。駅前の本屋をのぞいて帰るか……」


「きゃ」


 誰かにつき飛ばされたかのように、こちらへよろめいてくる女子がいた。


 彼女の名前はトウコ――純はだいぶ後から知ることとなる。


「大丈夫?」純、抱きとめる。


「ヒールがタイルにひっかかってしまって」


「こっちで座って」


「すみません。慣れないもの履いてきたばっかりに……」


 ふわりと漂った香りに、なにか懐かしい思いがする純。


「……ドジっ娘?」


「ドジッコってなんですかあ!」


 泣きながら怒るトウコ。やっぱりだ。懐かしい。ドジで気弱な、女神候補だった天使に似てる。


「どこかで逢ったこと、あるかな?」


「え? おなじキャンパス内なんですから、あるんじゃないですか?」


「……そうだね!」


 彼女についている守護天使と女神のリエル、目が合った。


 ウインクは奇跡のしるし。





               END

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虹の光の中で れなれな(水木レナ) @rena-rena

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