第18話 深夜に赤ペンを買いに行く男

 目が覚めると二時だった。

 勿論深夜のだ。


「そうだ、赤ペンを買いに行かなくては」


 そうして私はベッドから起き上がった。


 風呂場でシャワーを浴び、財布と鍵を持って外へと出る。

 外は予想していたより少し寒く、もう少し厚着をしてくればよかったと少々後悔しつつも、戻るのも面倒なので、そのまま歩いた。

 深夜の道は相変わらずで、一年前と何も変わらない。相変わらず、月とまばらな街灯が私を見ているだけだ。

 変わったのは私の方なのかもしれない。

 色々とやる事も増えた。書かなきゃいけない事も増えた。

 その変化は嬉しいものではあるけど、正直しんどさも多々とあり、大変ではある。

 しかしこの一年、人生の中で一番何かを頑張ったと思うし、一番成長出来た自信がある。

 新しい事も知った。己のキャパシティも知った。情報を集めるためにネットの海に一日中浸かり続けた。

 大収穫の一年だった。


 コンビニに着き、真っ先に文房具コーナーへと入る。

 よく考えると、このコンビニでそういう歩き方をしたのは初めてかもしれない。

 文房具コーナーの中のペンが並んでいる場所で一つ一つ赤ペンを吟味していくが、コンビニとなのに、意外と品揃えが豊富で、赤ペンも複数置いてあった。しかも値段もバラバラ。下と上では倍以上違う。某氏に「消せるペンがオススメ」と言われていたのでそれに絞るも、その中でも複数あって、困る。具体的にはノーマルタイプとスリムタイプ。値段は若干スリムタイプが安い。


「まぁでも、こういうのって細いのはインク量が少ないとかあるんだよな」


 などと貧乏人EYESの目利きで深読みしてノーマルタイプに手を伸ばす。

 ちなみに、こうやって深読みすると大体失敗するタイプの人間だ。


 ノーマルタイプを手に持ち、足はレジではなく逆側のドリンクコーナーへと自然と向かう。

「おっ、エナドリか……。これから作業だし、エナジーの補給は必須……」

 そう考えて炭酸飲料に手を伸ばす。

 深夜にコンビニへ行き、目的なくてもとりあえずドリンクコーナーとお菓子コーナーに寄っていく。これが効率的に脂肪を増やすコツだ。覚えておいてほしい。

 そしていつもの店長にお会計してもらい、コンビニを出た。


 月明かりに照らされながら、いつものように歩く。

 ふと、道の端の黒い地面に目がとまる。

 それは、月明かりと街灯の淡い光しかない夜の世界でも、はっきりと分かる黒。

「そういえば、工事してたんだっけ」

 道の一部が新しく舗装され、真新しいアスファルトが道を染めていた。

 下水管の工事なのか、道の補修なのかは分からない。それでも――

「変わらないものはない、のかな」

 そう思いながら、いつもの帰り道を歩いた。



―――――――



 というわけで、

『極振り拒否して手探りスタート! 特化しないヒーラー、仲間と別れて旅に出る(旧題:サマル振りヒーラーの異世界冒険)』

 が、書籍化します。


 発売は2019年の春頃を予定しています。

 詳しくはこちら。

https://kakuyomu.jp/users/kokuiti/news/1177354054887643953


 赤ペンの使い道は、お察しくださいね!

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深夜、コンビニ、探訪録 刻一(こくいち) @kokuiti

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