ドラゴン

スタッカの谷へ向かう数分前、全ての部隊は城門の前に集合し、準備を整えていた。


ディールも武器を身につけ馬に股がり、ノピアの指示を待っていた。


「よぉディール」


声をかけてきた男はアルスト=ロメリア。

ディールが入団する一年前に入団したというディールより三歳年上の男。


以前遭遇した盗賊団を捕まえるために協力してくれた人の一人。


魔法は、鉄を纏う騎士アイアンナイト


「おまえもついてないな、入団して一ヶ月でこんなことに駆り出されてるんだ。ほんとについてない」


「それでも、これが俺の選んだ仕事だ。死んでも悔いはない」


ディールの答えに少し驚いた顔をし、アルストはヒュ~と口笛を吹いた。


「お前、団長みたいなこと言うな」


「そうか?」


「そうだよ。なんというか、雰囲気的な?」


「なんだそりゃ」


「ハハハ。まぁ少しにてるってだけだ」


「まぁなんでもいいや。・・・死ぬなよ」


「そっちこそ」


二人が最後の言葉を掛け合い、前を見ると、ノピアが全部隊の前で馬に股がっていた。


「只今より、ドラゴン討伐作戦を開始する!全員生きて帰れるように、全力を尽くせ!」


ノピアが叫ぶと同時に全ての馬が走りだし、スタッカの谷へ向けて出発した。







スタッカの谷まであと半分の地点で休憩をとることになった。


理由は一つ


ドラゴンの位置を確かめるため。


「団長、ドラゴンの位置を調べるってどうやるんですか?」


「あぁその事はあいつに任せとけ」


ノピアが指を指した方面には一人の女性がいた。


「あいつの名前はスラン=セチア。あいつの魔法は相手の位置を探る探索サーチ。範囲の制限はあるが、範囲内ならあいつから逃げ切るのは不可能だ」


「へぇ、やっぱりこの騎士団にいる人って、やっぱ凄い人ばっかなんですね」


「当たり前だ。伊達に最強の騎士団名乗ってないからな」


ディールがもう一度スランに目を向けると、魔法を発動させたのか、体が青白く光っていた。


その姿はとてもキレイで、ディールは少し見とれていた。


しかし次の瞬間、スランの顔が一気に青ざめた。


魔法をといた瞬間叫んだ言葉で、なぜ青ざめたのかは理解できた。


「みんな早く逃げて!ドラゴンが来る!」


その言葉で全員に緊張がはしった。


逃げる体制に入る者。


武器を手に取り、迎え撃つ体制に入る者。


「どこだ!?どこにいやがる!?」


だが後者をの行動をとった者は間違いだった。


なぜなら、そのドラゴンは―――


「ダメ!ドラコンは真上に―――」


次の瞬間、ディール達の前に、大きな壁紙現れた。


「な!?」


全員があっけにとられ、思考が停止した。


ドラコンが降りてきた時の風で周りにいた者が吹き飛ばさた。


「なんだ?今の・・・」


ディールが見えたのは一つの大きな瞳。


と、踏み潰された仲間の最後。


「まずい、体勢を整えないと―――」


地面に上手く着地したのは


ディールとノピア、アルストを含め十四人。


死者、三名。


「グ"キ"ャ"ア"ア"ア"ア"ア"ア"」


ドラゴンの雄叫びが、響き渡る。


「おいおいマジかよ、こいつは予想外だ」


ノピアは今までにドラゴンを狩った事はある。

だが今回はそれとは規模が違う。


「覚悟していたとはいえ、流石にやばいぞ」


臆していたのはノピアだけじゃない、全員が臆していた。


「団長!ここは一旦引きましょう!こいつからしたら俺たちは蟻同然だ!一瞬で殺されるぞ!」


確かに、このドラゴンからしたら、ディール達は蟻同然。ディール達に勝ち目はない。


だか、


「蟻がドラゴンに勝てないって、誰が決めた!

蟻が弱いって、誰が決めた!俺たちは最強の騎士団だ!ここで引いたら、守るべき人達にも、もっと被害がおよぶ!それを食い止めるのが俺達の仕事だ!全員武器をとれ!ドラゴンを狩れ!」


ディール達は諦めてはいけない。守るべき人達のために戦わなければいけない。


「さぁ、いくぞ!」


ディール達とドラゴンの命をかけた戦いが、今始まった。



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異端児と呼ばれた少年 @Tokimizugimegami

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