新たなる仕事

ディールとミルシが入団してから1ヶ月が過ぎた、その間にディールがやったことは、迷子のペット探しや町の清掃。


「これって、本当に騎士団の仕事なんですか?」


思いっきりため息をついたディールは、食堂でノピアと昼食を食べていた。


「まぁ初めはそう思うだろうな。でもそれだけこの国は安全ってことなんだから、いいじゃねーか」


「それはそうですけど・・・」


ディールは口に次々と飯を運び、ペロッと平らげて、一息ついた。


「あと、ミルシはどうなったんですか?最近あまり姿を見ないんですが」


「あぁ、あいつなら最近この近辺で出た魔獣の駆除に行ったよ」


「俺も行きたかったなー、魔獣狩り」


本音を漏らしたディールにノピアは頭にチョップし、怖い顔をして言った。


「あのなディール、騎士団の仕事は遊びじゃないんだ。下手したら命を落とすかもしれない。そんな仕事を楽しそうとかで決めたらダメなんだ」


「はーい、分かりました」


ディールが生半可な返事を返したその瞬間、食堂に一人の青年が息を切らしながら入ってきた。


「だ、団員」


青年、スラーの服はところどころが土で汚れていた。おそらく相当急いでいたのだろう。


「どうしたんだスラー、そんなに息を切らして」


「そ、それが。スタッカの谷にドラゴンが現れ、周辺の村が・・・壊滅しました」


「なっ!?」


食堂にいた全員が驚きの声をあげ、どよめき始めた。


「なんでドラゴンが?今までそんな事例なかっただろ!」


「それが。恐らく新種のドラゴンで、今までとは比にならないほどのデカさらしく、偵察に向かった5名の内、3名が死亡しました」


「残りの2名は?2名とも重傷で、今は医務室で治療をしています」


「そうか」


ノピアは間をおいて、食堂にいる者に大声で伝えた。


「ここにいる者はそれぞれの部隊に伝達しろ!それぞれの部隊は戦闘準備を整え、直ちに集合せよ!」


今から始まるのは今までの仕事とは全く違う、全勢力を上げたドラゴン討伐だった。




全ての部隊が出揃ったのは40分後、広場に集まってそれぞれの準備に入っていた。


「注目!」


広場におかれた台の上にノピアが乗り、今回の討伐作戦の内容を伝える。


「今回の討伐作戦は、魔獣駆除に出向いている第八部隊にを除いた全部隊で行う!今回は今までにないほどの戦いになると思うが問題ない!わが騎士団は最強だ!何も臆する事はない!」


普通村をいくつも壊滅させたドラゴンを討伐すると聞けば、誰もが臆すはず。なのだが広場に集まった団員は誰も顔色を変えずに話を聞いていた。


「今回の討伐作戦においては、全ての部隊で叩く!それが作戦だ!」


作戦と、呼べるかどうかは分からないが、この強い者だけが集まっている騎士団だからこそできる作戦だろう。


「それでは一時間後、スタッカの谷に出発する!それぞれの準備を整えて待機せよ!」

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