第2話 君ハ妖精ナノ?



「サクラちゃん心配だよね??」


「私もそれ思った!ていうか、教師達は何であんなに平然としてられるんだろ。」


生徒達が騒いでいるのを目に止めず授業を進める男教師。


理科室の隅にはやはり小さな小鉢が置かれていた。

そこから、上に向かって伸びている花はピンク色の小さな花が咲いている。


「センセー。そこ全然分からないんでもう一回説明してくださぁい」


「分かりました。

あ、そこの数名の方話したいのであれば声のボリュームを下げてください。」


ニヤニヤと笑いながら男教師へもう一度説明をさせた男の生徒達は、再び大きな声で話を始めた。


どうやら、このクラスの生徒が行方不明になったらしい。


最初は少し家出をしているだけだと思っていた、友人達も騒ぎ始めている。


「……っ……」


男教師はふとピンクの花へと目を向けると、そこの前に少女が立っていた。


半透明で透けて向こう側が見えている、その少女は男教師を見つめ幸せそうに微笑んでいた。


ここ最近、男教師はその少女を目撃することが増えていた、その少女は他の人物には見えないらしい。


そして、その少女は決まって花があるところに現れる。



「君は…花の妖精なのか…?」



自然と男教師の口から溢れる言葉。


それを耳にした生徒達は、男教師を嘲笑うかのように指を指していた。


「やっぱりこいつ頭おかしいって」


「花を溺愛してるとかっ!!

キモすぎるよ!」


生徒の口から次々と心無い言葉が飛び出し、笑いあっている。


だが、そんな言葉男教師の耳には入らなかった。


目の前に立つ半透明な少女は少し首を傾げ、微笑みながら消えていったからだ。


ピンク色の花は、元々枯れかけていた。


生徒の誰かが農薬か何かを土にかけたのだろう。


それが原因で彼女は消えてしまったのだろうか?。そう疑問に思いながら男教師は授業の説明を続けた。



終了のベルと共に教室にいた生徒は次々と出て行く。


男教師は小さく溜息をこぼしピンク色の花を撫でると、花びらがヒラヒラと落ちていった。


「その花。なんて言うんですか。」


一人の女生徒が、男教師へと声をかけた。

メガネをかけた生徒だ。彼女はいつも男教師の授業を、真面目に受けていた。


「シュウカイドウという花です。

せっかく咲いたのに、彼らのイタズラのせいですね。」


土の上に白い粉のようなものを見つけ指先で摘んで見せる。



「シュウカイドウ…初めて聞きました。

あ、先生は山口さんのこと何か知りませんか?」


「山口さん…?とは誰のことでしょうか?」


「私と同じクラスの、行方不明になったらしいんです。

行方不明になって一週間。

連絡取れないんですよね」


顔にかかる髪を耳にかけながら悲しげに微笑む女生徒は、今にも泣きそうな顔をしている。


行方不明になった、山口という人物と親しかったのだろう。


「そうなんですか。

僕は知りませんね。

彼女と話したこともないと思いますが?」


「そうですか。

次の授業が始まるので私は失礼しますね!」


早足で女生徒は立ち去っていった。


花びらが散ってしまった小鉢を手に理科準備へ入り、登校途中で買った一輪の花を手にしながら一人微笑む。


「もう邪魔する奴は居ないよ?」


男教師の目の前に半透明の彼女が現れると男教師はニヤリと妖艶に微笑んだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

花憐な金木犀。 翠己 月 @suitsuk

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ