第4話 そいつは今も『そこ』にいる

 それ以降、私は二度とそのトンネルを通ることはありませんでした。

 残りの高校生活ではどんなに遅れても必ずバスに乗るようにしていましたし、自分で車を運転するようになってからも、そこを通るときはなるべく右車線を走り、歩行者用のトンネルがあるほうの車線には近づかないようにしています。


 あれから20年以上が経ちましたが、数年前、とあるバラエティ番組で心霊スポット巡りのような企画をやっていたとき、例のトンネルが紹介されていました。

 私が通ったのも大雨や大雪でかなり暗い日でしたが、番組の出演者たちがそこを訪れたのは夜。不気味な雰囲気がいっそう増している時間帯です。

 出演者たちは私の住んでいる町のほう、つまり本来の“入口”側からトンネルに入っていきました。

 その手の番組では「変な声が聞こえない?」「カメラの調子が……」というのがお決まりのパターンですが、私が見ていた番組もまた、そういったお決まりを崩さずに進行していきました。

 その間も私の目はある一点に釘付けになっていましたが、よくある心霊番組の例に漏れず、TVには何も映ることなくそのロケは終了しました。

 トンネルを抜けた一行は様々な感想を口にし、霊能者と呼ばれる人がおはらいのようなこともしていましたが、『そこにいるもの』を知る私は、それを見ながら思わずつぶやいていました。


「あんたたち、一番怖いやつがいるのは、あんたたちが何気なく通り過ぎた『入口』のすぐそばだよ」

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『入口』に立つ者 @FLAT-HEAD

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