第9話 霊視レッスン

 先月末の事だ。Twitterのタイムラインで誰かがリツイートした投稿が目についた。ある不動産会社のHPにある瑕疵物件の詳細にお祓いをする様子の写真がある、という。誰かが大元のサイトを見つけてきてURLを貼ったのでクリックして見に行ってみた。一戸建てで外観はきれいだが中はそこそこ年期が入っている。確かにお祓いをする神主さんの写真もあった。

 ふと思いつき、家の中に霊がいるかどうか確かめる方法というのを試してみた。やり方は、目を閉じて家の玄関を思い浮かべ、そのまま家に入って各部屋をのぞいて回るというのを想像の中で行うというもので、その時に部屋の中に誰かいるのが思い浮かんでしまったら、そこに霊がいる。これを自宅でやると玄関に二人いるのだが、こいつらに関しては夫と娘が何の方法も試さなくても素で「いるよねー」と言っているくらいなので、まあ無害な存在らしい。

 で、この瑕疵物件の写真を見て、まずは玄関を開けて中に入る様子を想像した。間取り図を基に、玄関に入ってすぐ正面脇にある階段を頭で思い浮かべながら上っていく。階段の写真が有るから容易だった。階段は途中で曲がり反対方向へと続くのだが、その小さな踊り場のような場所に小窓があり、その前に、なぜか小学校3・4年生くらいの男の子の姿が現れた。想像の中だから消すこともできるはずなのだが、どうしても消えない。顔は真っ黒に塗りつぶされている。あ、ヤバいな。とは思ったが、深夜のノリで観えたものをレスで書き込んだりして、それでその夜は終わった。

 ところで、その日より数週間ほど前からスマホの調子が悪くなっていた。なぜかWIFIも含め受信できないことが度々起こっていたのだが、とうとうぶっ壊れてしまい何にも受信できなくなってしまった。息も絶え絶えの状態の時にバックアップを取ってあったのでデータロスの心配はなかったから、とっとと初期状態にしてみたものの、それでも改善しない。仕方がないので新宿のお店に持ち込み、そこで期間内の保証による交換の手続きをすることにした。ただ実機がそこにないので後日に新しい本体を受け取ることになった。その間、代わりの機体を渡してくれるという。その変わりのスマホを受け取る手続きはすぐに終わるはずだった。同じ機種でレンタル用のものを係の人が持ってきたのだが、なぜかエラーが出てしまった。しばらくアレコレと試していたが、どうにもならないので、次のものを持ってきた。しかし2台目もダメだった。今度は少し古いタイプのものが出てきた。しかしこれもダメ。お店の人も首をかしげている。この時点ですでに2時間以上が経過していた。

 なんとなく、前夜の実験を思い出した。もしかしたらあれの影響かもしれない。試しにあの少年の姿を歌舞伎町の街頭に立たせてみた。もちろん、想像の世界でだ。いろいろな場所を思い浮かべたが、一か所、しっくりくる場所が見つかったのでそこに少年が移動したことにした。

 そして、4代目のレンタル用スマホは問題なく手続きができた。

 顔のない少年は歌舞伎町を楽しんでいるだろうか。一番、雑多な感じのところを選んだので気に入ってくれるといいな。



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非科学的ですね 永田電磁郎 @denjiroonagata

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