6

空港に着くと、

「14時着の便。それに乗ってるはずだから!」

という梓の言葉を頼りに、巧は到着ロビーへと向かった。


似たような方面からの便は他にないはずだが、待てども待てども、千綾は姿を現さない。


待ち切れず、巧は千綾へ連絡しようとした所で、朝からケータイを家に置き忘れていた事に気付く。


―さっき一回、家に戻ったのに…!!全く気付かなかった…


どうしようもない自己嫌悪に陥っていると、到着ゲートから出てくる懐かしい顔が見えた。


―千綾だ!!!!


意を決し、巧は呼び掛けた。

「千綾!!」


自分の名前を呼ばれ、声がした方へと顔を向ける。


「鈴屋くん…」

千綾は驚いた顔をした。


巧は駆け寄ると、

「千綾、おかえり。」

「あの…どうして?」

戸惑っている様子である。

「千綾を迎えにきた。」

「……!」

巧の言葉に涙ぐみ、千綾は頷いた。


「あのさ。」

そう巧は切り出すと、「ごめん!」

「え?」

「1年前、俺はすげーガキで、千綾のやりたがってる事に頭ごなしに反対して、全然分かろうとしなかった。」

「……」

「千綾が、どんな気持ちだったのか考えもせずに、一方的に逃げて本当にゴメン…」

「……」

「愛想つかされても仕方ないと思ってる。でも…」

と、巧は千綾の手を握り、「それでも、やっぱり離したくないと、今でも思ってるんだよ。」

真剣な眼差しで言った。


しばらく黙っていた千綾は、

「愛想つかされてたのは…」

と、口を開く。「私の方かと思ってた。」

「千綾…」

「私の我が儘で嫌な想いさせちゃってごめんね。私も同じ気持ちだよ。」

そう言うと、微笑んだ。


―俺が見たかった、千綾の笑顔だ!


「あの!」

巧は深呼吸をすると、ポケットから指輪を取り出した。

その指輪を見て、千綾はびっくりする。

「覚えてる、千綾?この石には、幸せな結婚へ導くっていう意味が込められているんだ。」

「うん、覚えてる…」

千綾の目から、涙が溢れた。


「千綾。」


巧は大きく息を吸い込んで、

「俺と結婚してください。」


「……はい。」


涙を流しながら千綾は笑った。


「やった!」

巧は千綾を抱き上げると、

「ちょっと!恥ずかしいよ…」

と言いつつも、千綾は幸せそうに微笑む。


その様子に、周りの人達が拍手で祝福をしてくれた。


「やれやれ、世話が焼けるんだから。」

側の死角で様子を見ていた梓は涙を拭うと、ケータイが鳴った。見ると知らない番号からだった。

「もしもし?」

「梓か?俺だ。」

梓は声ですぐ分かった。

「邦臣…」

「俺達、やり直さないか?」

せっかく拭った涙が、また溢れてきた…。



「もしかして、今日卒業式だったの?」

スーツを着ている巧を見て、千綾は聞いた。

「そうだよ。」

「そっか、おめでとう!」

と言うと、「私もこれから就活頑張らなくちゃ。」

「別にしなくて良いんじゃね?」

「え?」

「永久就職すれば良いよ。」

そう言いながら、巧は千綾の薬指に指輪をはめた。

「ありがとう。覚えててくれてたんだよね…」

千綾は手を拡げて指輪を見せる。

「あぁ。やっと渡せたよ…」

「大好きだよ。"巧"!」

すると巧は嬉しそうに、

「俺も。」


千綾の薬指で、アイオライトがキラキラと輝いていた。

それはまるで、真実の愛と出会えた二人を、祝福するかのように…






アイオライト

【完】



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アイオライト 柳 衣仁子 @i_that

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