第7話

帰り道は彼女が熱く花火について語ってた。

正直その話をボクは聞いていなかった。


「それで!あの赤くて丸かった花火はね!」


ドンっ!って横にある物体が勢いよく倒れる音。


ボクはお祭りごとは好きじゃない。明るくて楽しいことは好き。でも、どんなお祭りにも大抵いる 酔っ払いが苦手なんだ。


「返して!」 彼女の甲高い声


彼女のカバンが酔っ払ったどこかの男に盗られた。


その男は、即座に走って闇に消えていく。


彼女はこういうとき、叫ぶだけじゃない。走って追いかけるのだ。そういう無茶をする。


「おい!やめろ!危ない!」

ボクの制止の声も届かない。

その瞬間思い出した。そうだ彼女のカバンには携帯が入っている。あの祖母から貰ったと言っていたひげまるのついた携帯。


その瞬間ボクの足が動いた。


走った。無茶しちゃいけない、何事にも冷静でいなくちゃならならない。こんな足場の悪い所を走って足を痛めてはならない。こんな所で警察沙汰を起こしてはならない。駄目だ。でも足は止まらない。ボクはまるで蝉みたいに大声をあげていた。


そしてボクは初めて走っている彼女を追い越した。



初めて人に飛びかかった。





初めて人を愛した。




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さかさ セカイ @momonohana_

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