最終話 タコと火星人と今日子と醤油

私は今日子。


「さ、これで危険はなくなったタコ」


えっ?


どういうこと?


「さっきの【鯛】で一通り宇宙人倒したってことタコ」


えっ…それじゃぁ…


「これで安全に【火星】に行けるってことタコ」


そっか…私の大好きな地球。


さよなら…か。


ってなる訳ないだろ、おい。


危険がなくなったってことはもう戦争起きないってことでしょ。


つまり私が【火星】に行く必要もないってことじゃん。


「………(しまったタコ。どうするか…)」


おい、何とか言いなさいよ。


ねぇ。


「………(困ったタコ。略して困っタコ。なんちゃって)」


お前今、困ったタコ。略して困っタコとか思ってんだろ。


「!?(何でバレたタコ!さて、言い訳考えるタコ)」


さて、私の中から出て行って貰おうかしら。


【火星人】さん。


「………(そろそろ語尾にタコっていらないかな。もう無理)」


早くしろよ、おい。


「実は…困っタコとに、あなたの身体から出る方法がわからんのですよ」


!?


はぁ?ってことは私とあなたはずっと一緒ってこと?


「そう…なりますね…」


嫌だ!


絶対に嫌だ!!


何が面白くてタコと一緒に生活しなきゃいけないのよ!


「そう…言われましても…食べたのあなたでしょ?」


その通りです、はい。


「そもそもね、宇宙人(魚介類)を食べるとか正気ですか!?」


某芸人のマネしながら言うんじゃないよ。


でもまぁ、もっともね。その考えに至るのは。


私も食べたかった訳ではないんだけどね。


ほら…地球人から見たら美味しそうじゃん?


「正気ですか!?」


うるせぇよ、魚介類が!


お前らは食われてナンボなんだよ!


美味しく食されただけでもありがたいと思え!!


「そこで…提案なんですが…」


何よ!


「【火星】に行けば、私とあなたの分離方法がわかるかもしれません」


まじかぁ…


結局【火星】に行かなきゃいけないのね…


「では、行きましょうか。【火星】へ」


仕方ないわね。そのかわり、分離できたら絶対に地球に帰してよ!


「約束しましょう。では行きますよ」


ーーーーーーーーーーーー


ーーーーーーー


ーーーー



ここが【火星】なのね。


意外と…普通ね。地球とそんなに変わらない。


「地球から見るとただの荒野ですよ。私達タコのステルス力を甘く見ないで頂きたい」


そんなことどうでもいいから、早く私とあなたを分離させてよ。


「はいはい。着きましたよ」


ここで分離できるのね。


で、どうすればいいの?


「博士を呼んで下さい。地球人が来たとなればすぐにわかるはずです」


博士ね。


おい!博士!!さっさと出てこんかい!!!


『やれやれ、うるさい客じゃのぅ』


タコじゃん。博士っていうよりタコじゃん。


「当たり前でしょう。火星ですよ、ここ」


『ほほぅ、お前さん地球人かね?』


んだ。


早く私とこのタコを分離させてよ。


そして私は地球へ帰りたいの。


『よかろう。ほれ、そのポッドへ入りなさい』


うわぁ…超怪しいんですけど。


ま、仕方ないわね。


『では、スイッチオン!!!』


ぎゃぁぁぁあぁあぁああ!!!


『いや、何も起きてないはずじゃけど』


ノリよ、ノリ。


大事でしょ。


『ほれ、もう終わったぞ』


ホントに?


おーい、タコー。いないのー?


バカタコー、アホタコー、困っタコー。


………


いない。


返事がない。


『当たり前じゃろ。お前さんが望んだんじゃろ』


うん…あのタコ…どうなったの?


『残念ながら、もうこの世にはおらんじゃろうなぁ』


えっ?


『お前さんに食われた時点であやつの命は終わっておった。それを我が企業秘密で意識だけをお前さんに寄生させておったからのぅ』


嘘…でしょ…


じゃぁ、私の中にずっといれば…


『お前さんの命尽きる時まで一緒に生きれた…じゃろうなぁ』


そんな…そんな…


私…


『ほっほっほ。お前さんの中で少しでも一緒に生きることが出来たあやつは、幸せだったじゃろう』


私は…私は…


何て事を…


ってなる訳ないじゃん。


タコだよ?


別に何とも思ってないわ。


さ、さっさと地球に帰しなさいよ。


『もう少しおセンチになってもいいんじゃないのかのぅ…』


馬鹿なこと言わないで。


私はタコには興味ないのよ!


そう、せめて…せめて地球の人間(男)と恋させて。


もうここまで来たら人間の男なら何でも良くなってきたわ。


『ふぅ…まぁ、お前さんの力で全宇宙の平和は守られたんじゃ。さ、そのポッドへ乗るがいい。地球へ帰してあげよう』


いや、本当に迷惑だったわ。


あ、地球と言っても私の部屋に戻してよ!


変な所に戻したらお前…〆るぞ。


『合点承知の助じゃ』


『では、スイッチ おーん!』


ぎゃぁぁぁああぁあぁああ!!!


『だから何も起きてないじゃろぅ………』


ーーーーーーーーーーーーー


ーーーーーーー


ーーーー



目が覚めると私は自分の部屋にいたわ。


そう、これは夢よ。


夢なのよ。


何が【醤油の女神】よ。


あー、あんな夢見たら美味しい魚介類食べたいじゃない。


そう、【タコ刺し】よね。


本当は【再仕込醤油】で食べたいけど…


今は切らしちゃってるから


【濃(恋)口醤油】でいっか。


なんちゃって。


御馳走様でした。

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火星人と今日子と醤油 あふろ @afro0610

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