人でなしのいろは

囲味屋かこみ、

第 章

 時織友(ときおりとも)というその人物について、物語を騙れるくらいに知っていると言えば嘘になる。


 というのも、私からしてみれば“そいつ”は存在そのものが致命的にあやふやで、どこが欠陥しているのかすらも、とても定義できないよな、“それ自体が欠陥しているかのようなうやむやさ”、そう――それはあたかも根も葉もない噂のような人間だからだ。


 旧知の仲には違いないのだけど。


 いやいやもう、本当に。


 残念ながら、旧知の仲以外の何者でもないのだけれども。


 むしろ旧知の仲だからこそ、私はそいつから目を逸らして生きてきたのだと今なら思えるし、今更になって痛感するのだ。



 いつも一緒にいたのに。


 誰よりも赤の他人だった。



 もう一度言う。


 私はそいつについてよく知っていると言えば、嘘になる。


 それでもよければ始めよう。


 初めまして。


 時織友。


 つまり、私の物語を。

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