エピローグ 円卓の騎士

【鋼帝国城 城内 —円卓の間—】


 13つある椅子のうち、鋼帝国の軍人であろうか、緑色の軍服を着た人物が4人、そしてもう一人、椅子に腰掛けていた。


 銀色のティアラを頭に飾った人物。この国の王女にして鋼帝国の最高指揮官、『鋼女帝こうじょてい』が口を開いた。


「遅い……自称、旧世界の者共はまだなのか?」


「ただ今通している最中でございます……おっ……」


 重厚な鉄の扉が内側に開き、数名の人物が円卓の間へと入ってきた。その先頭を歩いていた無表情の緑色の軍服の男は、ビシッと敬礼をしながら言った。


「旧鋼帝国軍、鉄人くろうど軍曹、ただ今帰還した」


「うむ、御苦労であった。まあ座れ」


「御意」


 女帝の言葉に促され、無表情な軍服の男は空いている椅子に座った。


 一緒に入ってきた赤いキャップの男、茶色い帽子の老人、瑠璃色のローブの女性もそれぞれ椅子に座る。


 鋼帝国の女帝は咳払いをして、円卓に座った者全員に向けて話しかけた。


「秘宝大会……いや、鋼帝国杯に参加するつわものとして、わらわが選んだのはここにいる4名じゃ」


 円卓に座っていた緑色の軍服の4名が、席を立ち上がり姿勢を正した。


「鋼帝国海軍所属、五十嵐いがらし カイ、鋼帝国陸軍所属、碇谷いかりや リク、鋼帝国空軍所属、雨音あまね クウ、そして鋼帝国軍海軍元大将、ロイ・ヴァルカン」


 名前を呼ばれた者たちは、一礼した後、統率された動きで席に着いた。


「ちょっと……放しなさいよ!」


「貴様……抵抗するな……」


 何やら部屋の外が騒がしい。と思えば、黒髪のポニーテールの少女が軍服の男に連行されて来ていた。


 無表情な軍服の男は、席を立ち上がり、ポニーテールの少女の肩を掴み、女帝に言った。


「紹介しよう、彼女こそ我が推薦した鋼帝国杯の出場者、『菜の花 乃呑』だ」


「だから、私は出ないって言ってるじゃん!!」


 ポニーテールの少女は狼のように歯を立てる。


「まったく……乃呑は落ち着きがないのです」


「この状況で落ち着けるあんたが異常なの! 生徒会長!」


「……すぅすぅ」


「って、寝るな~っ!!」


 黒い長髪をなびかせたジト眼の少女は、立ったまま眠りについた、女帝は、「ほう」と声を上げた。


「軍人に囲われたこの空間で大胆じゃのう。キモが座っているのか、はたまた……この者の選者は誰じゃ?」


「私……」


 瑠璃色のローブの女性が小さな声で呟きながら立ち上がった。その時、


「とぅ! あたしの出番が遅いわ!」


 そう叫びながら、金髪のサイドテールの少女が乱入してきた。パレットだ。


「来たか……」


 円卓に座っていた、茶色い帽子の老人がガタッと立ち上がる。秘宝研究所の白樺所長だ。


「彼女はパレット、こんな老いぼれの推薦でよければ……」


「ふふ……威勢がいいのぅ、嫌いではないぞ」


 女帝は嬉しそうに扇子をあおぐ。


 立ち上がった瑠璃色のローブの女性は、フードを脱いだ。その顔を見た瞬間、パレットはレッグホルスターから拳銃を取り出し構えた。


 瑠璃色のローブの女性の顔は、パレットのよく知る人物と全く同じ顔をしていた。


「瑠璃様……!!」


「ううん……私は瑠璃様じゃないわ……」


「嘘っ!」


「……そこまでだ!」


 感情的になってきたパレットを、円卓に座っていた赤いキャップの男、神様があいだに入って止めた。


「瑠璃とそっくりだが、彼女は瑠璃じゃねぇよ」


「でも……」


 神様の説明に、パレットは納得出来ずにいた。神様は説明を加える。


「彼女はルーシェ。瑠璃のクローン人間だ」


「そんなこと言われても……」


「パレット、鋼女帝の面前だ」


 青い髪の青年の言葉に、パレットは渋々引き下がった。


 神様は言葉を続けた。


「俺の推薦は黒城 弾だ。秘宝大会の裏で行われる、鋼帝国杯で勝敗を決める」


「そして優勝者はこの国を手にする……そういうことか、旧世界の者共よ」


「ああ……!」


 どうやら黒城くんたちは、また大きな事件に巻き込まれてしまったようである。


 陽光町の推薦者の4人と被推薦者4人、鋼帝国の被推薦者4人、そして鋼女帝。


 今、円卓に13名の強者が揃った。

 新たな戦いの火蓋が切って落とされる……

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【完結】ヨハネと獣の黙示録2 上崎 司 (かみざき つかさ) @kamizaki

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