メンソレータムのリップクリーム

@senri00kanata

第1話

カタン

靴箱の上の花瓶が揺れた。

今日も、ここに手をついて靴を履く。


「いってらっしゃい」


今日も"あの人″は微笑んでいる。


あの人と暮らしはじめて一ヶ月


いい加減、なれるべきなのか。


そう、わかってはいるのだ。


今は苦しくても、一旦慣れれば息くらいできる、ということくらい。


「、、、いってきます」


今日は特に重い鞄を肩に、私は何かに追われるように家を出た。




「おはよー」


「あかり!おはよっ」


「今日も暑いね~‼まじ学校だるい」


「それな~」


「あかり~みゆき~‼」


「お、まゆ!っはよ~」


、、、、、ともだちはいる。


朝の登校も、二人一組の体育も、お昼の学食も、あぶれることはない。


皆、そこそこ優しくて、そこそこおしゃれで可愛くて、一緒にいるとそこそこ楽しい。


「今日からテスト一週間前か~」


「こないだ中間終わったとこなのにね」


当たり障りのない会話。

生暖かい、関係


「、、、あかり~?聞いてる?」


あ、やっちゃった。

これは、ダメなやつ。


「あっ!ごめん!なになに?」


「もうww 昨日のMスタのこと話してたんだけど~」


「あー‼亮くんめっちゃかっこよかったよね!」


「んね!やばかった!まじ神だわあ」



そんなに興味もないけど、別に嫌いな訳じゃない。

そんなに好きじゃないけど、このこたちがいないと困る。

だから、、、


「やばかった!あれは神としか言えない!」


空気に任せて生きていくしか、今はできない。













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