とある夫婦の茶番劇
神山イナ
『とある夫婦の茶番劇』
「オラオラアッ! 一家の大黒柱様のお帰りだアッ!」
アキオが仕事を終えて家に帰ってきた。
妻のミカが出迎える。
「あら、おかえりなさい。今日も遅かったわね」
ミカはおかえりの挨拶をしてから、何かして欲しいかをアキオに聞く。
「ごはんにする? お風呂にする? それとも私?」
アキオは手早く食べられる物を用意してと答える。
「俺は腹が減っている! 一分以内に食事を用意しろ!」
「はーい」
ミカは分かったと台所に行く。
(フッ、我ながら物わかりのいい女と結婚したものだ)
アキオはミカの顔を見た事で安心したが、気が抜けた事で疲れが一気に出てきてしまう。
「うっ!?」
(ばかな……この俺が〝夏バテを起こしている〟だと? あり得んぞ!)
「はあ……はあ……はあ……」
アキオはゆっくりと歩いて、台所の手前のリビングまで進む。
(た、倒れそうだ……。連日の激務がたたってやがるのか?)
そして服装を少し楽な感じにしつつ、テーブルにつく。
(このままではまずい……とりあえず腹に何か入れなくては……)
――ジャアアアアアアアアアアアアッ!!
――トントントントントントントンッ!!
台所でミカが食べ物を支度する。
アキオはその音を聞くと、気持ちが楽になった。
(カレーライスか!?)
ミカが台所からリビングに戻ってきた。
「お待たせ」
お茶漬けを作ってきてくれていた。
「なんだ、茶漬けか――」
(好みではないが、消化には良さそうだな)
アキオは食べ易くて良いと喜ぶ。
(しかも、即席の手作りにしてはなかなかにクオリティが高い)
少しの間お茶漬けの見た目を愉しんでから、アキオは食べ始める。
「ふっー! ふっー! ふっー! がつがつ!」
アキオがお茶漬けを食べる。
「あっちゃああああああああああああああ!?」
火傷するアキオ。
(フフッ)
その様子をミカは、アキオの向かいに座って見ていた。
幸せな空気が、二人を包んでいた。
「明日もがんばってね」
とある夫婦の茶番劇 神山イナ @inasaku
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