第4話 以心伝心【後編】

蒼が投げた紙にはこう書いてあった。

“☆時○○分作品棚付近に有った爆弾が爆発。直後先生の携帯に着信。それは犯人からの電話で建物の柱に爆弾があることを知らせる。解除する条件は教室内の解除キーを押すことで、ヒントは《此処には有って他には無い他には有って此処には無いものの間》。人質は7人。私・花蓮・先生を含む。人質うち負傷者1名。 蒼”

それを見た峻は思わす呟いた。

「本当か…」

そんな声が聞こえなかった蒼は窓越しに峻に向けて叫ぶ。

「今から出すよー」

そして中にいる生徒にも指示を出す。

「じゃあ。さっき名前を呼ばれなかった人は早く此処から出て。」

そしてクラスメイトには信じられない発言を峻に向かってする。

「お父さんよろしく! こっちは私がなんとかする! 」

「え?」

「今お父さんって…」

人質となった蒼と花蓮以外の生徒には信じられない。今下にいる刑事に向かってお父さんと言ったのだ。訳がわからないクラスメイトに対し花蓮が 助け船を出す。

「あそこにいる男の刑事さん。あれ蒼のお父さんだよ」

人質となった生徒は驚愕した。先ほど彼女の母親が伝説の名探偵だと言うことで驚いたのに父親も刑事だったとはと…。しかし彼らは小学生すぐに感心に変わった。

「すごいね。お父さん刑事さんなんだ!」

「うん。さて。此処には有って他には無い他には有って此処には無いものの間か…」

そんなクラスメイトの感心をあしらいながら蒼は犯人からの謎を解いていた。

「ああ。そうか」

待っていた杖で床をトンッと突く。その衝撃なのか彫刻刀が刺さった傷がズキッと傷が痛み、蒼は顔を歪める。その顔を見た蒼の傷を作った女子生徒が申し訳無さそうな顔をして蒼に謝る。

「大丈夫?私のせいで…」

「大丈夫。花蓮!」

花蓮は蒼の言いたいことがわかった。正直なぜわかるのか花蓮自身でも疑問だった。

「はいよ。書けばいいのね」

「うん。解除キーはここにある。このピアノに」

そう言って蒼が指差したのは美術室の中央に陣取っているグランドピアノだった。

「とりあえず」

と言いながら蒼はピアノの蓋を開ける。流石に1人ではできないので先生以外の全員で。

するとそこには複雑にコードが絡まっている解除キーがあった。

「大丈夫なのか?」

男子生徒が心配する。しかし蒼は涼しい顔をしていた。

「大丈夫。花蓮!」

蒼は花蓮の名を呼ぶと解除キーの様子を事細かに言い始める。一方の花蓮は蒼からもたらされた情報を元にスケッチをしている。そう。始めに蒼が花蓮を呼んだ理由はこれだったのである。

「えっ」

「うそっ」

生徒もそうだが、これには先生も驚いた。蒼が言い終わってから数分後花蓮がスケッチを終えた。

「ありがと。うーん。先生ラジオペンチはありますか?」

蒼は花蓮からスケッチを受け取ると数十秒間見つめると先生に質問した。すると先生は蒼にラジオペンチを差し出す。

「はい。どうぞ」

「ありがとうございます。…」

ラジオペンチを受け取ると蒼はピアノにある解除キーの所へ行き、複雑に絡まるコードを手順通りに切りだした。そして切り終わり、解除キーが現れる。

「よし。あとは…」

蒼は解除キーを押して残り時間表示が止まるのを確認した。一方花蓮を除く全員は驚いている。蒼はスケッチを数十秒しか見ていないそれなのに内部の様子を見抜き正規の手順で解体したのだから。

一方花蓮は

「よかったー」

とホッとしていた。


そして蒼は探偵のように話し始めた。

「さて。今回の謎は、《此処には有って他には無い他には有って此処には無いものの間》まず始めに、《此処には有って他には無い》に当てはまるのはあの絵ですね。他の学校にはないでしょう。なぜなら有名な絵画より生徒作品を飾るほうがいいですからね。次である《他には有って此処には無い》それはホワイトボードです。大体の小学校の美術室にはホワイトボードがありますがここにはありません。よってその間はあのピアノになります。さてこんなことができるのは貴女しかいません。先生。犯人はあなたですね。あの時 1番初めに伏せたのは先生と花蓮のみ。花蓮はわかりますが私の声の意味を一度で分かった先生おかしいのですよ。先生貴女はそんなにも生徒の恐怖顔が書きたかったんですか?そんなのただの馬鹿ですよ。こんなことまでして。」


そう犯人は美術の先生。推理した内容や証拠を突きつけると先生はキャラが変わった。

「だって…。笑顔よりそっちの方がいいじゃなぁい〜。ふふっ。こっちでも爆破は出来るのよ〜」

そう言って先生は手元にある起爆スイッチを押そうとするしかし

「あっ」

「私を甘く見ないでください」

蒼は先生を組み伏せて、起爆スイッチを奪った。さらに峻に向かって叫ぶ。

「お父さん!手錠!」

「はいよ。花蓮ちゃん!」

蒼からの要求を聞いた峻は自分の手錠を取り出し投げる。手錠は綺麗な放物線を描き、窓の近くにいた花蓮の手の中に収まった。蒼は手錠を花蓮から受け取り先生につける。

「はぁ。なぜ私に解かせようとしたんですかまさか怪我をしていれば解けないとでも?」

蒼は心底呆れたように言う。

「いいえ。本当は止めて欲しかったんだと思うわ。」

そこに峻たちが教室に入ってくる。

「大丈夫だったか?」

「うん。大丈夫。」

蒼はそう言うが、花蓮は

「大丈夫な訳ないじゃん!」

と言う。なぜなら怪我をしてるのだから。

「そうね。」

佐藤さんも花蓮に同意する。

「心配してくれてありがとうでも大丈夫…」

しかし怪我が酷かったようで蒼はその場に崩れ落ちる。それを咄嗟に峻が支える。

「おい!蒼!蒼!ったく毎度毎度無茶しやがって…。」

「こっちに早く。」

佐藤さんが峻を急がせる。

「私も行く!」

花蓮も峻たちについて行った。

先生も他の刑事に連れてかれる。

やっと事件が終った。


それから蒼は病院に搬送された。蒼の病室では花蓮が顔を曇らせている。

「蒼…」

すると頭に衝撃がくる。

「痛っ。えっ?」

そこには杖を持った蒼が笑っていた。

「私的にはそんな顔見たくないな〜。特に花蓮は。花蓮はいつも笑ってなきゃ。」

蒼が無事だったことに安心し、花蓮は蒼に抱きつく。

「蒼〜。」

「わっキャッやっやめてやめてやめてってばやめてって言ってるでしょ?」

あまりのしつこさにムカついた蒼は持っていた杖で花蓮を叩く。

「いたーい。もー。」

「やめてって言ってるのに、やめない方が悪い。あ。そういえば花蓮のお母さん私のお母さんのベストパートナーだったらしいよ。だから私と花蓮は以心伝心の間柄だったんだね。」

「そーだね。そっかだからか」

花蓮は疑問の答えがわかってスッキリした。だからこそ言える。

「これからもよろしくね」

「うん。よろしくね」

「でも、心配かけないでよ?」

「はーい」

そうして2人は笑いあった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

藍色の名探偵 雨津 海衣 @AmeduUe

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ