第11話 プロローグ

「やっと間に合った。おじさん、おばさんは僕が急にいなくなって心配しているかなあ」

 ボンタは小雪の舞う夜道を駅に急いでいました。

 駅舎は明かりはついていましたが静かで誰もいませんでした。ボンタは改札を抜けてプラットフォームに出ると、一番むこうの5番線に向かっていきました。ふかみどり色の列車が停車していて、最後尾には赤いランプがふたつ点灯していました。

”リリリーン!”

 発車のベルが鳴り響いたので、ボンタはあわてて列車に飛び乗りました。

”ガタン、ゴトン。ガタン、ゴトン”

 列車はゆっくりと動いていきました。列車の中は静かで誰も乗っていない感じがしました。ボンタは切符を見て3号車5-A席を探しました。指定席についてみると、そこには濃いグレイの服を着た大きなトラ猫が窓側の席に座っていました。

 外をながめていたトラ猫はボンタを見て声をかけてきました。

「やあ、待ってたよ、ボンタ」

「おまえはトラ…」

「トラ船長と呼んでくれないか」

 ボンタは鉄工所で飼っていたトラ猫が大きくなって人間の言葉をしゃべるので驚 きました。ボンタもトラ船長の向かい側にすわって窓の外の夜景を眺めました。しばらくするとレールの音が聞こえなくなり、列車は夜空に向かってどんどん上昇していきました。眼下には街の灯りが見えていました。その後、列車は急加速して窓の外景色が流れて直線状になりボンタは一瞬ふらっとなってしまいました。

 ボンタが正気に戻ると、列車は火星をこえて、ある小惑星に停車していました。

「さあ、降りようボンタ」

 列車の横には大きな猫型の宇宙船が停車していて、宇宙船から列車に向けてオレンジ色のシールド光線が向けられていました。

「これが俺の船、マタタビ号だ」

 ふたりはシールド光線のトンネルを通りマタタビ号に乗り込み操縦室に向かいました。

ドアを開けると、前の操縦席に大きな灰色ネズミが座っていました。

「こいつはパイロットのラットだ」

「よろしく」

 灰色ネズミに声をかけられて、ボンタはまたびっくりしました。

「さあ、俺たちの惑星系にもどろうぜ」

「どこにいくの」

「この太陽系とは、銀河の中心を超えて反対側にあるんだ。ラット出発してくれ、ワープ+8で航行だ」

『なぜ僕はここに来て、遠いまた別の銀河世界に行こうとしているのだろう。トラ船長は一体何者なんだろう?わからない・・・』

 マタタビ号はワープ航行にはいり、太陽系を後にしていきました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

宇宙ねこ~キャプテン トラ そらまめ企画 @webrat2

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る