第2話 目潰し・金的万能論

 急所攻撃が使えれば中国武術が最強。

 急所攻撃があるから少林寺拳法は最強


 はい、間違いです。武器を持っていても、使い方が分からなければ使えません。

 もう少し正確に言うと、“使えるように練習していない技は”使えません。

 目潰しや金的攻撃は、危険な技です。危険ですから、練習仲間に試すわけにはいきません。

 仕方なく、型をやります。野球の素振りと同じように、ただ空を攻撃します。

 少し発展して、人に当てる感覚を養うために、お互いの動きを決めて、二人で型をします。

 問題なのは、多くの武術がそこで止まってしまうことです。実際に当て合うこと無しに、技は身につきません。


 例えば、目潰しをボクサーにやってみたらどうなるでしょうか。知らない技だから食らってしまうでしょうか。

 そんなことはありません。

 目潰しはただ手首から先の形を変えただけで、本質的にはパンチと同じです。踏み込みも、腰や肩、肘の使い方も。パンチを避けるのと同じように避けることが出来ます。

 金的蹴りだってそうです。狙う場所が金的というだけで、本質的には前蹴りです。

 こういった技は、“危険な型”をやった武術家ではなく、“安全なスパーリング”をやった格闘家の方が上手く使えるのです。


 なので、グローブや防具をつけて自由攻防の練習をガンガンしつつ、型で急所攻撃を覚えた武術家が居るなら、それはちゃんと最強と言ってもいいでしょう。


 現実には、そんな人達はほとんど存在しませんけど。

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