第3話 ブラジリアン柔術が勝った理由

 ブラジリアン柔術とは、前田光世という、世界を旅した柔道家がブラジルに柔道を伝え、そこから発展した格闘技であり、競技です。

 競技として特筆すべき点は、審判が試合に殆ど介入しないということでしょう。

 ボクシングは、不利になったり疲れたりして、片方の選手がもう片方の選手に抱きつけば、審判が試合を止めて離れさせます。

 柔道も、寝技の展開で膠着すれば審判が試合を止め、立った状態から再開させます。

 ブラジリアン柔術で審判が試合を止めるのは、試合終了の時か、場外に出てしまう場合か、反則や怪我などがあった場合だけです。

 そのルールによってブラジリアン柔術は、“他の格闘技に存在しない領域”において力を発揮出来るようになっています。


 打撃系格闘技なら、組み合った後は存在しない。

 柔道なら、寝技で膠着してからの展開は存在しない。

 レスリングなら、両肩が床についてから先は存在しない。


 しかしそれはそれぞれのルール内でのことなので、MMAや喧嘩ではもちろん続きがあります。

 ブラジリアン柔術はその存在しない領域で戦えるので、MMA誕生以前の世界では猛威を振るいました。


 ブラジリアン柔術を世に知らしめたグレイシー一族の一人、ヘンゾ・グレイシーはこう言います。

「ボクサーはライオンだ。だが柔術家はライオンをサメの入ったプールに落とすことができる」


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