エナジースタンドを探しまわって三千里

ちびまるフォイ

口にホースを突っ込むって…下ネタ?

エナジースタンドに1匹のオオカミがやってきた。


「ハイオク、満タンで」


「あいよ」


オオカミの口にホースが突っ込まれると、ぐんぐんエナジーが流れてくる。

満タンまで注入されるとホースが引き抜かれた。


「はい、満タンです。ご利用ありがとうございました」


「……あの、本当に入ってますか?」


「え? ええ。ちゃんと入れてますよ」


「そうですか……」


オオカミはエナジースタンドを出て行ったが釈然としない。


「なんか物足りないんだよなぁ……」


オオカミが若いころはエナジースタンドでエナジーを入れてもられば

いくつもの山を越えることなんてたやすかった。


けれど今はいくら注入しても全盛期のエナジーを感じられない。


悩んだオオカミは知り合いのゴリラに相談してみた。


「……ということで、最近めっきりエナジー感じられないんだよ」


「ウホ。ウホホホホ。ウッホホホ」

「日本語しゃべれや」


「それ単に自分と合わないエナジーにしてるからじゃないウホ?」


「えっ? どういうこと?」


「オオカミくんの行っているエナジースタンドに連れてってくれウホ」


オオカミはゴリラを連れて行きつけのエナジースタンドにやってきた。

ゴリラはスタンドにあるホースからエナジーを少し出して分析する。


「オオカミくん、ここのスタンドは強欲エナジーを使っているウホ」


ゴリラの見せた成分表には7つの成分が表示されていた。

その中でも「強欲」の成分がもっとも多く含まれている。


「知らなかった……。エナジースタンドにもさまざまあるんだな」


「僕は色欲エナジーを選んでるウホ。

 人生が色恋ざたばっかりになるけど僕にあってるウホ」


「お前、性欲強そうだもんな」


オオカミはゴリラと別れると自分に合うエナジースタンドを探すことに。


「そうか、昔はあれが欲しいこれが欲しいと思っていたので

 強欲エナジーが合っていたがいまはちがうものな」


まずはゴリラと同じ色欲エナジースタンドに入った。

エナジーを入れるとモテたり、恋をしたりしやすくなった。


「うーーん。なんかこれじゃないよなぁ……」


別に結婚願望もなければ彼女も欲しいわけじゃない一匹狼なので

これは自分に合わないエナジーだと感じた。


今度は怠惰エナジースタンドにいってみた。


「……これもちがうなぁ」


怠惰エナジーを注入すると、毎日ダラダラできるようになるが合わない。

できればいろんな山々を走ったりしたい。



次は暴食エナジー。

次は嫉妬エナジー。

次は憤怒エナジー。

次は傲慢エナジー……。



「ダメだダメだ! どれも全然あわないじゃないか!!」


7つの成分それぞれ試したオオカミだったが

結局どれも自分にぴたり合うものはなかった。


悩んでいると、隣の山からやってきたカラスが教えてくれた。


「隣の山に、最強のエナジースタンドがあるカァ」


「本当か! 行ってみよう!!」


オオカミは自分から失われたなにかを取り戻すために山を越えた。

隣の山にはギラギラとネオン輝くエナジースタンドが待っていた。


「これは……すごい! 本当に聞きそうだ」


「ッラーイ! ッラーイ! はい、いらっしゃいませー!!!」


店員が人間だったので思わずオオカミは驚いた。

でも、大声が動物の鳴き声ぽかったので害はなさそうだ。


「ここに最強のエナジースタンドがあると聞いたんですが」


「しゃっせーぃ! そうですよ! ここが最強のエナジースタンド!!

 どんな動物でもたちどころに元気いっぱいになれますよ!!」


「すごい! お願いします!」



「満タン入りまーーっす!!!」


人間はホースをオオカミの口に差し込んでエナジーを入れていく。

オオカミは流れてくるエナジーがこれまでの比じゃないことに驚いた。


満タンになると、昔のような元気が体にほとばしっていた。


「うおおお! すごい! すごい!! エナジーが溢れてくる!」


「きくでしょう!? うちは人間用のエナジーを使ってますからね!!」


「人間用……! 人間はすごいですね、こんなにもエナジーを秘めてるなんて。

 いったいどんな成分を使ってるんですか?」


オオカミがきくと、店員はびっと親指を立てて答えた。



「強欲、色欲、怠惰、暴食、嫉妬、憤怒、傲慢……全部のせッス!!

 

 人間にはすべて含まれたエナジーしかきかないんスよ!!」




「か、体に悪そう……」


オオカミは急に体調が悪くなった……。

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