た だ の に く の か た ま り (終)
『あっ!』
眠くなり、意識を無くした後、キラリと何か光ったのが見えた瞬間、絶命を迎えた。
その時、一瞬、処置された体に居た私の心ではないもともと備わっていたはずの野生の牛の原始意識の根源である心の叫びのようなものが今、話しかけてきたような気がした。
今度も正常に転生処置が済み、次の野生牛の原始意識と融合した《桃桜》は、この子牛のすべてとなる。
この過程で、いつも見る夢がまた始まった。
二本足で立ち、いろんな食べ物を食し、色とりどりの布(服)を着て、と う き ょ う という名の石の街(都市)を歩く。
だが『??』今度の夢は少し違った。
石の街を二本足で歩いている二人。楽しそうに食事する二人…想像も出来ない格好で生殖行為をする二人…
だけど…私と一緒の二本足の人間は、なぜだか 所 (牧場の検査官 所正彰)だった。
私は、この夢の事を《所》には話さなかった。話しては、いけない事のような気がしたし…何よりもこの事を考えると心が傷むからだ。
転生を繰り返すたびに…何かが違ってきた…少しづつ、少しづつ…なぜ…なぜ???
一緒に転生を無事に済ませた、仲間の子牛の《紅草》と《楽樹》が私を誘いに来た。
『今日も良い風が吹いているよ…さあ走ろうよ…』と歌っている。
私は思う通りに動くようになったばかりの若い体に命令を出し、元気いっぱいに走りだし歌う…
《おいしいよ》…私の名は《桃桜》。
私は、優良遺伝子を持つ、とっても、とっても《おいしい》生き物。
美しい大理石模様の霜降り肉の《おいしい》
た だ の に く の か た ま り…
《 お わ り 》
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このお話は、昔、BSE問題で日本中が大騒ぎをしていた時に考えた作品です。
少し修正して載せました。
おいしいよ(食肉牛 編) アンクロボーグ @ancloborg
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