アイをきみに

Erin

第1話(執side)

「あっちいい!!」


プールが解放される前の体育、最後の野球。

高校二年生になり、体育の授業数が減り、つまらない授業が多くなるばかり。今日だけはいっぱいはしゃごうと、金属バットを大きく振った。


まもる、やる気だな!」


ピッチャーのごうが構え始める。


集中、集中……。


「ストライク~」


気持ちよくボールが打てなかった。


「ったく、野球部の投げたボールなんか打てねえよ! 手加減してくんねえと!」


文句を言う俺に、わかったよと優しく返事してくれる剛。


俺の声が大きかったのか、グラウンドの半分を使ってソフトボールをしている女子たちの視線が集まった。

文句を言っているときじゃなくてかっこよくボールを打った時に見てほしかったなぁ。

適当に女子に手を振ると、なぜか軽蔑されたような顔をされたが、一人だけ俺をじっと見つめる女子がいた。


三好芽衣みよしめい。女子の中で一番おとなしく、静かで、俺の一番嫌いなタイプ。こっちから話し始めないと会話も続かなさそうな相手だ。


半ばおふざけで彼女にウィンクを送ってみる。

反応なし。見えていなかったのか? つまんねえ。


「まもるー、投げるぞー」

「はいよー」

もう一度バットを構える。


集中、集中……。


いつもより、剛の投げる球が遅く見えた。


カキーン~☆


「よっしゃ――!!」


初めて剛の球を打てたことに興奮し、勢いよくベースまで走り出した。

あまりの嬉しさに、みんなの声が聞こえないほどに。


気づいたのは足がベースについた時だった。


「大丈夫!?」


女子が朝会台の近くで集まっていたのだ。


「執、やべえぞ。お前の投げたバットが……」


剛に押されながら、女子がいる群れの真ん中までたどり着く。

そこには、目をおさえ、倒れこんでいる三好の姿があった。


「お前の投げたバットが、三好の目に当たったみたいなんだ」



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アイをきみに Erin @Little_Angel

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